2015 Fiscal Year Research-status Report
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26520108
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Research Institution | Utsunomiya Kyowa University |
Principal Investigator |
吉良 貴之 宇都宮共和大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50710919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 麻佑 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (00634049)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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Keywords | 法哲学 / 世代間正義 / 世代会計 / 分配的正義 / 比較行政法 / 移民 / 無国籍 / 神経倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は昨年度に引き続き、日本および世界各国の世代間協働の制度状況と実態についての調査と、それを踏まえた理論構築作業を進めた。「世代会計」に表されるような世代間不均衡状況のもと、「縦横の」分配的正義がいかにして可能になるのか、という問題設定のもと考察を深めた。理論的には、デニス・マッカーリーらが批判的に検討する「人生全体の平等主義」や、エリザベス・アンダーソンらが提唱する「民主的平等」論などに着目し、福利を時点ごとに集計可能なものとして捉える見方に対し、人生全体の・ライフステージごとの福利のあり方を有機的に考慮していく視点の必要性も確認した。その成果の一つとして、日本の公的年金制度のあり方を分配的正義論・福利論の観点から検討した論文・吉良貴之「年金は世代間の助け合いであるべきか?」(瀧川裕英編『問いかける法哲学』法律文化社、2016年予定)がある。 世代間協働の制度状況については、特に比較行政法的観点からの調査・考察を進めた。主に対象としたのは各種制度が充実しているドイツ・アメリカであるが、少子高齢化のあり方や文化状況が日本と似ている東アジア諸国(韓国、中国、台湾、香港など)の調査も有益であるため、比較対象を広げることとなった。その成果の一部として、Asia-Pacific Science, Technology & Society Network: Biennial Conference 2015 でオーガナイズドセッション "Intergenerational Democratic Deliberation for the Long-term Risk Management"を企画し、研究代表者・分担者・協力者の計4名が、災害とリスク管理、移民問題、脳神経倫理と責任判断などの個別テーマについて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は【研究実績の概要】で述べた通り、当初の研究計画を発展させる形でおおむね順調に研究が進捗している。本研究の二本の柱である(1)法哲学的理論研究(特に世代間正義論、福利の時間論など)と(2)比較行政法研究(特に欧米・東アジア諸国の世代間協働の制度状況の分析)は、研究分担者・協力者との協働のもと、具体的な知見の蓄積が進みつつある。また、同じネオ・ジェロントロジー分野採択プロジェクト(高齢者法研究会)との連携も始まり、最終年度に向けて研究成果を総合・発信するための準備も整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は最終年度にあたるため、本研究の日本の柱(法哲学的理論研究と比較行政法研究)の総合する形での最終的な研究成果を発表することを目指す。具体的には、ライフステージごとに分析された福利論の知見をもとにいかなる世代間協働の制度構想が可能かを、欧米および東アジアでの調査結果をもとに、実現可能な形で提言することを目標とする。また、ネオ・ジェロントロジー分野の他の研究プロジェクトとの協働も強化したい。 成果発表のあり方としては、論文の執筆が中心となるが(論文集として出版することや、英語論文にして国際的発信を強化することも意識する)、それ以外にも各種学会でのワークショップ開催や、市民参加型イベントによるフィードバックなども試みる。現在のところ、2016年11月開催の日本法哲学会にてワークショップ「高齢化社会と世代間正義」開催が予定されており、そこでの研究メンバーの発表および論文が本研究の最終成果の中心となる見込みである。
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Causes of Carryover |
注文物品の未着により、物品費の一部(24610円)を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度予定の物品をすみやかに購入する。
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Research Products
(14 results)
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[Presentation] WS総括コメント2015
Author(s)
吉良貴之
Organizer
科学技術社会論学会WS「〈法と科学〉の法理論」
Place of Presentation
東北大学
Year and Date
2015-11-22 – 2015-11-22
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