2016 Fiscal Year Annual Research Report
Intergenerational Law and Justice in Aging Society
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26520108
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Research Institution | Utsunomiya Kyowa University |
Principal Investigator |
吉良 貴之 宇都宮共和大学, シティライフ学部, 講師 (50710919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 麻佑 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (00634049)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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Keywords | 世代間正義 / 平等論 / 福利 / 年金改革 / 脳科学 / 移民の正義 / 気候の正義 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度においては、世代間の正義にかかわる問題を、主に現在世代内部の規範的問題としての「世代内(intra-generational)正義」と、いまだ生まれざる将来世代と現在世代との規範的関係を問う「世代間(inter-generational)正義」の問題に分け、両者の関係がいかなるものでありうるかをまとめ、法理論的含意を抽出することを試みた。その成果のひとつが、吉良貴之「年金は世代間の助け合いであるべきか?」(瀧川裕英編『問いかける法哲学』法律文化社、2016年8月、pp. 168-183)であり、世代間の協働のための条件を考えるうえで、一定の時間的幅をもった福利(well-being)のあり方とその規範的意味を考えることが重要であることを確認し、エリザベス・アンダーソンやデニス・マッカーリーといった論者の「民主的平等」論に関わる議論を批判的に検討した。 また、以上の成果の実定法上の含意や、科学技術倫理に対するインパクトを見定める作業を、研究分担者の寺田、研究協力者の中村、戸田、岡崎らとともに行った。実定法上の含意を見定める作業については、これまでの欧米・東アジア各国調査の成果も踏まえ、特に憲法についてドイツ移民の世代間問題を踏まえたうえで中村が、行政法について欧州の年金制度改革を踏まえたうえで寺田が検討した(吉良も含めた3名による発表として、日本法哲学会2016年度ワークショップ「高齢化社会と世代間正義」)。また、世代間問題に対する脳科学からのアプローチについて戸田が、東アジア各国の法史学的比較を踏まえたうえでの現代日本法への含意抽出について岡崎が検討をした。それぞれの成果は最終成果報告書および各自の論考において示される予定だが、世代間問題に関わる原理的問題を踏まえたうえでその実定法理論的含意を探る本研究の試みは十分に達成されたものと考えている。
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Research Products
(8 results)