2016 Fiscal Year Research-status Report
安定的な米供給の実現のための灌漑水田・天水低湿地・天水畑地間の最適資源配分の導出
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26520304
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 謙介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80391431)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2019-03-31
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Keywords | ネリカ / タンザニア / 作物モデル / ORYZA / APSIM / パラメータ決定 / モデル妥当性検証 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、熱帯半乾燥地域の中でも近年稲生産国として着目されているタンザニアを例に、圃場試験・モデリングおよび経済分析の各手法を統合することにより、灌漑水田・天水低湿地・天水畑地間の最適資源配分の導出方法を開発し、延いては安定的な米供給の実現に資することを目的とするものである。 平成28年度には、12月3日から12月11日にかけてタンザニアに出張し、アルーシャのキリマンジャロ農業技術者訓練センター(KATC)のJICA専門家を訪れ、センター所長も交えてタンザニア全体にわたるネリカ普及計画についてビリーフィングを受けた。また当研究室で開発した、作物モデルを用いたネリカのタンザニア適作地マップについてセミナーを行った。その後、2カ所の灌漑稲作地、およびタンザニア北東部の天水稲作地を訪問し、農家聞き取りを行った稲の生産量、気象条件、農家のネリカに対する考えなどについて調査を行った。帰国後現地で入手した気象データおよび世界気象データベースNASA Powerを用いた気象情報に、世界土壌情報データベースSoilGridで得た情報をもとに、APSIM-Oryzaの陸稲モデルによるシミュレーションを実施した。 シミュレーションと実測値における収量とを比較した結果、実測値がかなり大きい地点があり、それは現地調査で他からの水の水平移動があると分かった地点に一致し、天水低湿地におけるシミュレーションの困難さが認識できた。一方、天水畑作についてはある程度の精度で収量を予測できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロジェクト開始以降タンザニア現地を訪問するのが2年遅れたが、本年度開始でき、プロジェクトの進行にはずみがついた。現地における圃場試験等も未実施であるが、今年度の訪問によって実現可能性についての見通しを得ることができた。一方モデリングについては、タンザニア全土の気象および土壌データの観測点が少なく、そのシミュレーションを広範囲に実施することが最大の懸念事項であったが、今年度2つのデータベースを試行し、広範囲の分析に用いるには十分であることが確かめられたことの意義は大きい。これによってモデル化で得られたデータのタンザニア全土での分析が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は短期の滞在であったが、現地におけるよい協力関係も築け、また生活・研究環境についても見通しを得ることができたので、平成29年度には数ヶ月に渉る長期に現地滞在を行って圃場試験を実施し、作物モデリングに必要なデータを収集する予定である。9月以降、1シーズンに渉って、アルーシャのKATCで圃場試験を行うとともに、当初計画にあるタンガ州およびムベヤ州において農家調査を実施する。またモデリングにおいて、天水低湿地の水平の水移動をどのように扱うかについて、文献調査等を行いつつ考察を進める。
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