2018 Fiscal Year Research-status Report
安定的な米供給の実現のための灌漑水田・天水低湿地・天水畑地間の最適資源配分の導出
Project/Area Number |
26520304
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 謙介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80391431)
|
Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2020-03-31
|
Keywords | ネリカ / タンザニア / 陸稲 / 作物モデル / 適作地 / 農家調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、熱帯半乾燥地域の中でも近年稲生産国として着目されているタンザニアを例に、圃場試験・モデリングおよび経済分析の各手法を統合することにより、灌漑水田・天水低湿地・天水畑地間の最適資源配分の導出方法を開発し、延いては安定的な米供給の実現に資することを目的とするものである。 平成30年度には大学院生(修士)を10月22日から11月30日までタンザニアに派遣し、同国の4県(ウェテ県、ウランカ県、ブソケロ県、ムパンダ県)にて農家調査を行った。各県で4カ村、それぞれの村で4人の農家を対象にし、全体での調査数は64であった。調査内容は各農家の基本的な社会経済的な状況の他に、ネリカ1、その他の陸稲、その他の作物の収量、栽培上の問題等でありこれらを持って農家のネリカ栽培への意志に影響を及ぼす要因を同定した。また昨年度から取り組んでいたネリカ1のタンザニア全土における収量マップを作成した。その結果以下の結論を得た。①作物モデルを用いたネリカ1の作物モデルを用いたネリカ1の収量予測は可能であり、収量が高くなる地域の特定に使用できる。②普及最適地を特定するにはネリカ1の収量だけでなく、既存のイネ品種の収量やネリカ1の食味、マーケットアクセスなど複数の要素を考慮する必要がある。③今後ネリカ1の普及を行っていくべき地域を特定していくためには、収量以外の要素についてもスコアなどを示したマップを作り、それらを重ね合わせることが有効な手法と考えられる。 本研究結果を持って担当学生が平成30年12月に修士論文「タンザニアにおける陸稲ネリカの効率的普及を目的とした普及プロジェクトの現状分析及び作物モデルを用いたネリカ適作地マップの作成」を提出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に1ヶ月間のタンザニア訪問を実施しその中で国の東西南北広い範囲にまたがる地点から64点のインタビューを実施するとともに、タンザニア全土を0.5度のメッシュに区切って精密なシミュレーションを行い、それをArcGISを用いて地図化するなど、本格的な研究の展開を見せることができた。またそれらの結果をまとめて修論とすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、農家がネリカを選択するかどうかは、他の選択肢との収益上の比較優位性であるとの仮説についてより本格的に取り組む必要がある。すなわち他の作物についても陸稲と同様に、それらの作物モデルを用いた収量と収益性の推定を行い、またそれらを地図上に展開して複数のレイヤーとし、その上でネリカの収益性を他作物と比較できるようにしていく必要がある。またその中で市場への接近性などの要素も組み込んでいくことができる。 一方で農家への綿密な聞き取りおよび実際の坪刈などで対象年の収量をより正確に把握してモデルのキャリブレーションを行い、モデルの精度を上げていく必要がある。
|
Causes of Carryover |
経済系の連携研究者がプロジェクト後半に農家家計調査および経済分析を行う計画であったが、平成28年2月に英国ブリストル大学に異動した。その代わりの連携研究者を探したが、なかなか引き受けてが見つからず計画が遅延した。現在は同じ専攻内の経済系の助教との打ち合わせが進展し、次年度にその協力を得る見通しが得られている。その経済系の助教との共同研究(資料入手、学会発表)のため次年度使用額が必要となった。
|