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2014 Fiscal Year Research-status Report

日米ファンコミュニティにおける「つくること」を通した文化的実践のエスノグラフィ

Research Project

Project/Area Number 26540172
Research InstitutionTokyo City University

Principal Investigator

岡部 大介  東京都市大学, メディア学部, 准教授 (40345468)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2016-03-31
Keywordsファンダム / 野火的活動 / 交換形態 / つくる行為 / ハイブリディティ
Outline of Annual Research Achievements

2014年度は,日米のアニメファンによる非商業的な文化的実践の生態系に関するデータ収集を行なった.
本研究で調査対象となるファンどうしのコミュニケーションには,オンラインのツールが多用されている.そこで,筆者がこれまで築いてきた人的ネットワークを通して,日米のファンたちの活動に参与することを試みた.日本国内において10人のコスプレイヤー,および3人の同人誌作家にインタビューおよび同行調査を実施した.また米国においては,2名のファンサブ実践者(日本のアニメに翻訳された字幕をつかけるボランタリーな活動に従事している人びと)と,日本のアニメのローカライゼーションを担う企業に勤務する者1名にインタビューを行なうことができた.
結果,米国のファンダムにおいては,例えば非営利的なファンサブの生成という「つくる行為」を通して,ニッチなコミュニティで行なわれていると同時に,例えば,もともとはファンサブに従事していたファンダムの人たちが,日本のアニメ・マンガコンテンツ配信を取り扱う企業の(字幕付けなどの)業務を請け負うようになるなど,商業と非商業の境界を横断しながら,消費と生産が展開されていることが見出せた.一方で日本においては,アメリカほど明確ではないものの,同様の傾向は見られるようだ.今日的なファンダムは,制度化されたシステムに依拠した商業的なプロダクションを通して,また同時に,それとは異なる形で,自らの「ファン資本」を流通させている.それは貨幣経済とは異なる交換形態である.
得られたデータより,現代のファンダムにおいては様々な交換形態がハイブリッドに混淆している点が分析可能であると推測される.よって例えば,ファンダムを取り巻く文化においては,貨幣による商品交換のみならず,例えばSNS上で,お互いがお互いの資本となるような有形無形の資本交換や参照が行なわれている点に着目する必要がある.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2014年度において,日本国内において10人のコスプレイヤー,および3人の同人誌作家にインタビューおよび同行調査を実施できている.また米国においては,2名のファンサブ実践者(日本のアニメに翻訳された字幕をつかけるボランタリーな活動に従事している人びと)と,日本のアニメのローカライゼーションを担う企業に勤務する者1名にインタビューを行なうことができた.2014年度は合計5名から10名の対象者を想定していたが,現在日本とアメリカあわせて16名にインタビューが実施できた.
上記に加えて,2014年度は,3Dプリンタやレーザーカッターといったデジタルファブリケーション機器を備え,大量生産・大量消費とは異なる,「個人によるものづくり」を,ネットワークを介して協働的に実践している活動に従事する人びととのネットワークも構築できた.そこで得られたインタビューデータ,参与観察データもまた,「つくる行為」を通した学習を分析対象とする上で,有用なものとなることが推測される.
ファンダムの文化においても,例えば日米のコスプレイヤーたちは,衣装などの造型にデジタルファブリケーションの機材を導入し始めている.環境,すなわち道具や他者とのネットワークの状況が変われば,ファンダムの活動の欲求も大きく変容してくることが見て取れると考える.
2014年度に構築したネットワークをもとに,既にアメリカでのインタビューを2名依頼している,早急にインタビューを実施し,そのデータを含めて分析に移行する予定である.

Strategy for Future Research Activity

2015年度は,初年度に引き続き、日本国内と米国におけるアニメファンコミュニティにおけるエスノグラフィを通したデータの蓄積を継続する.アニメファンコミュニティへの半構造化インタビューを継続する.日本側の調査は完了したため,アメリカのインフォマントに対し,6月にインタビューを実施する計画である.
その後,大まかな観点をきめて,グラウンデッドセオリーアプローチに依拠したカテゴリ化,概念化の手法を用いて,半構造化インタビューで得られたデータを分析,まとめていく.具体的には,2014年度に実施した野火のように広がるファン活動,メディアコンテンツ利用の商業/非商業のハイブリディティの現状についての理解に基づき,2015年度は,特に「コミュニティにおける知識の生成」と,「実践のコミュニティへの参加とアイデンティティ形成」に関するデータ収集と分析に注力する.その上で、エスノグラフィの観察記録及びインタビュー記録の総合的な分析に当てる.インタビュー記録はすべて逐語におこし,観察記録とあわせて分析を試みる.コーディングのために,(主に)インタビュー資料整理の際は,大学院生らの調査補助者にも協力を依頼する.
2015年度は成果をまとめ,国内外の学会にむけて論文化を試みる.また,米国で開催される国際会議digital media and learning2015での発表が決まっている(採択率25%).国内では,認知科学会,日本質的心理学会等での発表を計画している.

Causes of Carryover

2014年度に予定していたよりも多くの調査協力者にインタビューが可能になったため,そのインタビューの逐語作成(ICレコーダー録音内容の起こし)のためのアルバイト費用が多く必要になった.そのため,2014年度に予定していたデータ分析用コンピュータの購入ができず,2015年度にデータが整った段階で円滑に分析に移行できるよう,2014年度分の研究費の一部を2015年度に移行することとしたため.なお,現在は,外付けハードディスクにインタビュー録音ファイル,および,映像記録ファイル,あわせて逐語ファイルを保管し,鍵のかかるキャビネットで保管されている.

Expenditure Plan for Carryover Budget

残額18,488円は,2015年度に,質的データ分析用のコンピュータ購入費用の一部にあてる予定である.

  • Research Products

    (3 results)

All 2015

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] ものづくりコミュニティへの参加を通した学習2015

    • Author(s)
      松浦李恵・岡部大介・大石紗織
    • Journal Title

      認知科学

      Volume: 22(2) Pages: 印刷中

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Learning through participation in communities of digital fabrication2015

    • Author(s)
      Rie Matsuura and Daisuke Okabe
    • Organizer
      digital media and learning
    • Place of Presentation
      LA, USA
    • Year and Date
      2015-06-11 – 2015-06-13
  • [Book] 墨東大学の実践ー「学習の常識」に揺さぶりをかける,香川秀太・青山征彦編『越境する対話と学び』2015

    • Author(s)
      岡部大介・加藤文俊・木村健世
    • Total Pages
      16
    • Publisher
      新曜社

URL: 

Published: 2016-05-27  

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