2015 Fiscal Year Research-status Report
天然植物の再生利用による地球環境浄化に根差した太陽電池および燃料電池の創製
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26550102
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小松 真治 東海大学, 理学部, 講師 (50423520)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非可食性バイオマス / 天然植物色素 / 天然ラッカーゼ / 色素増感型太陽電池 / 酵素燃料電池正極 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨウシュヤマゴボウから抽出の色素を使用した色素増感型太陽電池(DSSC)では、巨峰から抽出の色素を使用のDSSCの約2.4倍の光エネルギー変換効率と短絡光電流密度を確認できた。これは、巨峰色素使用のDSSCではアントシアニン系色素の水酸基とTiO2表面の水酸基が水素結合を形成するが、ヨウシュヤマゴボウ色素使用のDSSCではベタレイン系色素のカルボン酸基とTiO2表面の水酸基がエステル結合を形成するので、色素からTiO2への電子移動が巨峰の場合よりも効率的に行われたものと考える。 一方、AuTiO2膜およびTiO2膜で組んだDSSCの光エネルギー変換効率はそれぞれ、0.0529%および0.0167%であった。この変換効率の違いは短絡光電流密度の大小によるものである。Au微粒子をTiO2に添加することで、電荷移動抵抗が低下し、短絡光電流密度が増加したものと考えられる。また、Au微粒子のプラズモン吸収によって生じる光電場増強場によって、色素の励起が起こりやすくなったためであると考えられる。変換効率の向上は確認できたが、一般的なDSSCと比較すると大幅に性能が低い。 また、様々なキノコ抽出液に浸漬後のカーボン電極では-0.7~-1.0 V(vs. Ag/AgCl)付近で電解液中の溶存酸素の還元ならびに電極上のラッカーゼに由来する電流応答が観測された。特に、カワリハツ抽出液からの修飾電極は他のキノコ抽出液からのものよりも大きな電流応答であった。このことは、キノコ中のラッカーゼ以外の成分が酸素還元電流に影響することを示唆している。各修飾電極の交流インピーダンス測定では、Au粒子とカワリハツとの修飾電極におけるバックグラウンド電流および電荷移動抵抗がAu粒子のみの修飾電極に比べ小さくなった。これはAu粒子によって電極上のラッカーゼ修飾層が密になり、抵抗が軽減されたためであると推察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
色素増感型太陽電池のセル自体の最適化を積極的に実行したことによって、電池動作時における安定性のあるセルを組むことができた。現在は、電池作動時の電極への光照射下における交流インピーダンス測定を積極的に行なっているが、等価回路の解析などが今後の課題である。 また、様々なキノコからの抽出液を用いた電極修飾を用いた電気化学測定によって、電解液中の溶存酸素の還元にとって優位に働くキノコを見出すことができた。現在は、電極表面上における酸素還元にとって有効な働きを示すラッカーゼの電極反応について、その詳細な調査が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
色素増感型太陽電池では、光エネルギー変換効率においてヨウシュヤマゴボウ色素使用のものが巨峰色素使用のものよりも優位であった。ヨウシュヤマゴボウおよび巨峰における色素成分を特定するため、赤外分光法やラマン分光法を用いた構造解析を行なう。 一方、ヨウシュヤマゴボウとAu微粒子を使用した色素増感型太陽電池では、その光エネルギー変換効率は、一般的な色素増感型太陽電池のものよりも著しく低い。このことに対する解決策として、交流インピーダンス測定によってセル内部の抵抗成分の特定を行なうと同時に、セルの構築条件について再検討を行なう。 また、酵素燃料電池正極として、様々なキノコからの抽出液を用いた電極修飾を行なった。用いたキノコの種類によって、電極表面上のラッカーゼ以外の成分による酸素還元電流への影響があることが分かった。まずは、電極表面上における酸素還元にとって有効な働きを示すラッカーゼの電極反応について、その詳細な調査を行なう。
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Causes of Carryover |
各物品の購入において、購入物品の各々について可能な限り安値で購入することを心掛けた結果、9,586円の残額が生じた。平成27年度については、これ以上購入する物品が無かったので次年度に繰り越すことにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
出張のための旅費や学会発表のための参加費として支出する予定である。
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Research Products
(9 results)