2014 Fiscal Year Research-status Report
三次元造形法による超多品種極少量生産に対応した補装具部品の革新的設計・生産技術
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26560319
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
硯川 潤 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究室長 (50571577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 剛伸 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 部長 (40360680)
中村 隆 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 主任義肢装具士 (40415360)
高嶋 淳 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究員 (90711284)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 3Dプリンタ / 義手 / 強度試験 / 自助具 / CAD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,近年生産技術としての活用が盛んになってきている3次元積層造形技術を活用し,ユーザ個人に適合した支援機器部品の製作を可能にする設計技術の構築を目指す.補装具に用いられるモジュール部品は,規格品の組み合わせで多様な身体状況への適合を可能にする. 一方で,部品の品種点数の制約から,規格範囲外の適合は困難になる場合が多い. 本研究では,このような問題を解決するために,所望の適合寸法の補装具部品を,3次元積層造形法でオンデマンド生産するための設計・生産手法を開発する. 今年度は,1.オープンデータベースにおける福祉機器・用具に関する設計情報共有状況の定性的調査,2.ABS樹脂の熱溶解積層で製作した樹脂試験片の強度試験,3.能動義手の熱溶解積層法による試作,の3項目を実施した. 福祉機器・用具の部品の3次元情報は,すでに3Dプリンタに関するいくつかのオープンデータベースコミュニティにて共有・利活用されている.しかし,それらの強度設計の信頼度はデータ提供者の技能等に依存しており,個人利用した際の安全性は担保されていない.キーワード検索により,共有されている義肢・車椅子に関する設計情報を抽出したところ,静的な荷重計算で強度設計が十分に達成できる部品に加え,繰り返し荷重が印加され一定レベルの強度解析を必要とする部品が多く共有・利活用されていることが分かった.熱溶解積層で製作したABS樹脂試験片の引張試験と有限要素法解析結果を比較したところ,造形の質によっては解析と実試験の結果に大きな不整合が生じる条件が存在することが分かった.一方で,データベースにおいて共有されている能動義手の一つを実際に出力・アセンブリし,専門職による機能検証を行ったところ,軽量物の把持などにおいて十分な機能を有する機構・構造が実現されていることが分かり,信頼性担保の重要性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,3次元積層造形法を用いた福祉機器・用具製作時における問題を,主に強度設計の観点から考察した.3次元積層造形法を用いて製作した部材の強度評価はこれまでにも様々な応用を志向して研究されてきたが,本分野における知見の蓄積は十分とは言えない.一方で,オープンコミュニティにおける福祉機器・用具部品や自助具の設計情報の共有や利活用はすでに始まっており,本研究の意義は大きい. 全期間を通しての目標設定に対して,今年度は実際に共有されている福祉機器・用具部品に着目し,現況の把握・機能の検証を行った.さらに,ABS樹脂試験片の強度評価から,熱溶解積層法で造形された部材の強度解析において,計算結果との相違が無視できなくなる条件を抽出できた.従って,抽出された条件を回避するような構造や造形パラメータを自動的に付与・算出できるアルゴリズムが求められる. これらの成果は,3次元積層造形法を用いた補装具部品の設計手法を構築する上で重要な知見であり,次年度の研究遂行に向けて必要十分な進捗であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度に得られた知見にもとづき,3次元造形法を用いて福祉機器・用具部品を製作する際の部品構造の自動生成・強度評価手法を構築し,既存製品に用いられている選択・調整適合型の部品品種を3次元造形品で拡充できることを確認する. さらに,JIS で制定されている補装具部品の強度評価試験を用いて,設計された強度が3次元造形法で達成されていることを検証し,提案手法の妥当性を確認する. 手動車椅子及び下腿義足の完成用部品から,数種類の選択・調整適合型部品を選定し,それぞれの適合寸法を提案手法により可変させる. まず,部品形状の3次元測定から,基本となる CAD データを作成し,可変・固定領域を設定する. 自動生成した部品構造の強度を,強度―構造データベースに基づき評価し,適正な安全率を有することを確認する. 最後に,造形した部品構造を用いて実際の部品強度評価試験を行うことで,安全率設計の妥当性を検証する. 破損の有無を確認するだけでなく,試験中の応力測定などを組み合わせ,近似的な応力解析結果と一致していることを確認する. さらに,意図的に安全率を低く設定した部品構造を製作し,想定通り破損に至ることも確認し,提案手法の妥当性を多面的に実証する.
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Causes of Carryover |
本研究では,3次元造形法による試験部材の製作と,強度解析のための数値計算ソフトウェアの購入を予定していた.3次元積層造形に用いる消耗品の量が予想より少なく,購入予定のシミュレーションソフトの選定に想定以上の時間を要しため次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実施した強度試験の分析が終了次第,適切な数値計算ソフトウェアの購入を進める.また,次年度は多様な材料を用いた3次元積層造形法による試作を予定しているため,併せて予算を執行していく.
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Research Products
(3 results)