2014 Fiscal Year Research-status Report
画像処理とグラフ理論によるサッカープレー分析システムの開発
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26560357
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂上 賢一 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40383509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石崎 聡之 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (60321395)
松原 良太 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (70581685)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 画像処理 / サッカー / グラフ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,サッカーにおける競技力向上を目的とし,サッカー試合映像の画像処置により試合中の選手・ボール位置計測システムの開発および計測に基づいた選手およびチーム機能の評価を目指すものである. 開発した選手位置計測システムは,サッカーピッチを2台の市販ビデオカメラで半面ずつ撮影し,背景除去などの画像処理法と選手の移動を動態予測モデル(パーティクルフィルター)によって予測しながら追跡するものである.開発したシステムを用いてJリーグの選手データを計測したところ,ヨーロッパ等で使用されている既存の選手位置計測システムと同じ精度で計測できることが示された. この選手位置計測システムで計測された2つのチームの選手の位置関係にグラフ理論を適用し,選手間の連携およびチーム機能の定量化を試みた.その結果,選手間のパス回数と選手間を結ぶグラフにおける辺(エッジ)の出現回数との間に相関があることが示された.また,いくつかの試合データから同一のチームでは攻撃時に同じグラフパターンが頻出する傾向にあることが示された.このことから選手位置をもとに作成したグラフから,選手間の連携やチーム機能が評価できる可能性が示唆された. 一方,ボール位置計測システムの開発では,選手位置計測システムと同じ映像を使用し,背景除去に加え分離度などのフィルターを用いた画像処理によって試合中のボール位置を計測するシステムの開発を行った.その結果,映像上でボールが確認できる状況では約85%の割合でボール位置を検出できることが示された.また,ボール位置情報と選手位置情報とから試合分析方法の検討を行い,攻撃中に相手チームの最終ラインを突破できる有効な攻撃と味方チームのボール保持位置との間に関係がある可能性が見いだされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,平成26年度は,(1)選手データの計測が可能な選手位置計測システムの汎用化と精度向上,(2)ボール位置を手動追跡で計測するシステムの開発,(3)選手追跡システムで計測されるデータに基づいた選手評価とグラフ理論によるチーム機能評価のための項目の提案を目標としていた. (1)選手位置計測システムについては,既存のシステムと同程度の精度をもつシステムが完成し,Jリーグの試合映像から選手データの計測ができる段階にまで至っており目標を達成している.(2)ボール位置計測システムについては,当初は手動追跡での計測を目標としていたが,自動で計測するシステムの開発まで進展しており,目標よりも大幅に研究が進展している.(3)選手データ評価とグラフ理論によるチーム機能評価のための項目の提案については,選手間のパス回数と選手間を結ぶグラフにおける辺(エッジ)の出現回数との間に相関を見出せたことや,同一のチームでは攻撃時に同じグラフパターンが頻出する傾向を見出している.これらは評価項目としての可能性を有しており,当初の目標をおおむね達成したといえる.一方,選手データ評価については,既存の評価法である試合中の総走行距離,スプリント回数が選手評価項目として不十分であることを示唆するデータが得られているが新たな項目の提案には至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
選手・ボール位置計測システムの開発に関して,当初は,選手位置計測システムとボール位置計測システムの統合を予定していた.しかし,ボール位置計測データを選手やチーム機能の評価に結びつけて新たな評価項目を提案することは,現時点では困難であると予想される.その一方で,選手位置計測システムの高精度化や実時間計測の実現は,多くの選手データの短時間での計測を可能する.選手・チーム機能評価のためのデータ蓄積は極めて重要な実施項目である.したがって,選手・ボール位置計測システムの開発については,選手位置計測システムのさらなる高精度化と実時間計測の検討をすすめる. 一方,選手評価とグラフ理論によるチーム機能評価については,これまでの研究から,チーム機能の評価に関して有用性が期待される評価項目がいくつかの試合の分析から見出せている.したがって,蓄積された選手データに対してグラフ理論に基づく分析を継続していく.選手評価については既存の評価項目として頻繁に用いられている試合中の総走行距離,スプリント回数は選手評価項目として不十分であることが認識されている.しかし,現在まで新しい評価項目は提案されていない.多くの研究において速度変動に基づいた分析は未実施であることから,本研究では速度データの分析に基づく新たな選手評価項目の提案が可能か否か検討して行く. また,これまでの研究実施により多くの選手データが蓄積されている状況である.したがって統計的評価を行うにあたり十分なデータ数が得られていることから,上記の評価項目が実際のサッカーに適合しているか否かをサッカーに関する経験と専門性の見地から評価項目の妥当性を検討していく.
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Causes of Carryover |
平成26年度の実施内容のうち,選手データの計測が可能な選手位置計測システムの開発と,ボール位置を手動追跡で計測するシステムの開発について,当初の目標よりも大幅に研究が進展した.一方,開発したシステムで選手データの計測を実施していたが,選手位置計測システムの高精度化や実時間計測をすすめる必要性が新たな課題となってきた.当初予定していた機材の導入をすることなく平成26年度の目標を達成したことや今後の課題を鑑み,機材導入のための予算を次年度へ繰越す判断をした.これにより,次年度予算と合算して新たな課題の解決に必要な機材を導入することが可能になり,より良い成果が期待できる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
選手位置計測システムの高精度化や実時間計測の実現は,多くの選手データの短時間での計測を可能にし,選手・チーム機能評価のためのデータ蓄積の効率化に寄与することができる.しかし,選手位置計測システムの実時間計測化には新たな機材の導入が必要である.そのため,繰越した予算と次年度予算を合算して実時間計測化に必要な機材を導入し,データの蓄積を極めて効率的に実施していく.
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Research Products
(5 results)