2015 Fiscal Year Research-status Report
冬眠動物はなぜ寝たきりにならないのか? -骨格筋萎縮耐性獲得の分子基盤の解明-
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26560369
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
宮崎 充功 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 准教授 (20632467)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 冬眠 / ツキノワグマ / 骨格筋 / 廃用性筋萎縮 / 寝たきり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「冬眠」を長期間の身体不活動モデルと定義し、冬眠動物がどのような生物学的適応機構を用いて骨格筋萎縮耐性を獲得しているのか、その分子基盤を明らかにすることを目的としている。これまでの検討から、冬眠前後(冬眠前:11月下旬、冬眠後:4月中旬)におけるクマ骨格筋の生化学的解析を完了し、特に冬眠に際して骨格筋タンパク質代謝およびエネルギー代謝を制御する細胞内シグナル伝達系が変化し、筋タンパク質を保持するための適応が生じる可能性を明らかとした。また活動期(7-8月)および冬眠期(1-2月)に骨格筋(大腿四頭筋バイオプシー)を採取し、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析を完了させた。同一個体における遺伝子発現の季節変動を比較することで、特に冬眠中に活性化(もしくは抑制)される冬眠誘導性遺伝子を同定することに成功した。現在は、この冬眠誘導性遺伝子の解析にて同定した候補遺伝子に対して、in vitroおよびin vivo機能解析を遂行している段階である。これらの研究成果については、Experimental Biology 2015 (Boston)、Cell Symposia: Exercise Metabolism (Amsterdam, 2015)や第4回骨格筋生物学研究会(松本市、2016)等において発表を行い、また24th International Conference on Bear Research and Management (Alaska, June 2016)における特別セッション「Bear Physiology with Implications for Humans」でのシンポジウム発表を予定している。また現在は、これまでの解析結果をまとめ、原著論文としての投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね申請書にて提示した計画通りに研究が遂行されている。平成26年度から平成27年度にかけ、予定していたスケジュール通りに複数匹の同一ツキノワグマ個体からの骨格筋サンプル採取(活動期:7-8月、冬眠期:1-2月)を成功させた。また本研究における最も重要な解析である次世代シークエンサーを用いた冬眠誘導性遺伝子の同定にも成功し、現在は候補遺伝子のin vitroおよびin vivo機能解析を遂行している段階である。これまでの研究成果は、Experimental Biology 2015 (Boston)、Cell Symposia: Exercise Metabolism (Amsterdam, 2015)等において学会発表を行い、また24th International Conference on Bear Research and Management (Alaska, June 2016)における特別セッション「Bear Physiology with Implications for Humans」でのシンポジウム発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、概ね研究計画書にて申請した通りのスケジュールおよび解析内容にて研究遂行されており、経過は極めて順調である。そのため、今後の研究の推進方策について、計画書からの大きな変更は予定していない。平成28年度が研究遂行最終年度であるため、残された研究課題の遂行に加え、原著論文としての成果公表を目標に研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
当該年度に使用を予定していた費用のうち、主に次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析を行うための予算について、事前の見積額よりも安価で受託解析を行うことができたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画については、これまでの検討から同定された冬眠誘導性遺伝子に関する遺伝子改変モデルの導入を含めて、より詳細なin vivo機能解析を達成させるために使用していく。具体的な使用内訳としては、物品費及びデータ受託解析に加えて、研究最終年度であるため、原著論文発表のための投稿料等に使用していく。
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Research Products
(9 results)