2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞内の金属濃度変化に着目した新たな感染症治療薬の創出
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26560453
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
和田 章 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 専任研究員 (90443051)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マラリア / 治療薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリアは、世界三大感染症の一つと表現されるものの、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの感染症治療薬に比べて数が少ないのが現状である。さらに、クロロキンやその誘導体などに対する薬剤耐性マラリアが熱帯地域を中心に世界各地で出現していることから、従来の治療薬とは異なる機構で薬理作用を発揮する新たなマラリア治療薬の創出が期待されている。一方、近年、様々な細胞活動を司る微量金属元素の存在とそれらの役割を理解するメタロミクスが提唱された。この概念を拡張すれば、マラリアも例外ではなく、その増殖過程において、赤血球内の微量金属元素を最大限に収集・活用するシステムを備えていることが推察される。そこで、本研究課題では、マラリアに感染した赤血球内の金属イオン濃度の変化に着目し、マラリアの増殖に必須の金属イオンと特異的に相互作用する分子リガンドを探索することで、独自のマラリア増殖阻害剤を創出することを目的としている。特に、当該年度は、前年度に引き続き、金属イオンに対して特異的に結合する分子リガンドの候補を収集し、その中から、赤血球に感染したマラリアに由来するLDH(乳酸脱水素酵素)の酵素活性を指標にして、マラリアの増殖阻害を誘導する分子リガンドの新規探索とその評価に取り組んだ。その結果、nMレベルで増殖阻害活性を発揮する新たな分子リガンドを見出すと共に、それらの特殊な作用機序の一端を分子レベルで解明することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、前年度に引き続き、金属イオンに対して特異的相互作用を発揮する分子リガンドの候補を収集すると共に、その中から、赤血球に感染したマラリアに由来するLDH(乳酸脱水素酵素)の酵素活性を指標にして、マラリアの増殖阻害を誘導する分子リガンドの新規探索とその評価に取り組んだ。その結果、nMレベルで増殖阻害活性を発揮する新たな分子リガンドを見出すと共に、それらの特殊な作用機序の一端を分子レベルで解明することに成功した。それゆえ、本研究課題は、おおむね計画通りに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに見出した“マラリアの増殖阻害を誘導する分子リガンド”の中から、nMレベルで活性を示す分子の誘導体合成を検討すると共に、それらの詳細な作用機序解析を実施することで、さらに低濃度で抗マラリア活性を発現する独自の分子リガンドを開発する。そして、各種哺乳類細胞に対する細胞毒性の評価、個体モデルを利用した薬物動態などの生物医学的解析にも挑戦することで、これまでの薬剤とは異なる新たなマラリア増殖阻害剤の創出を目指す。また、本研究課題で得られた成果の特許化をはじめ、国内外の学会・シンポジウムなどでの発表および論文化も視野に入れて取り組む。
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Causes of Carryover |
当該年度では、前年度に引き続き、金属イオンに対して特異的に結合する分子リガンドの候補を収集する共に、その中から、赤血球に感染したマラリアの増殖阻害を発揮する新たな分子リガンドの発見とその作用機序の解明に成功している。その一方、研究代表者の研究場所の移動に伴い、本研究課題を遂行するための新たな環境整備などにも従事する必要が生じたため、研究計画を一部変更しつつ、本研究課題に取り組んだ。それゆえ、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の使用計画としては、マラリアの増殖阻害活性を発揮する各種分子リガンドの物理化学的性質を分子レベルで評価すると共に、細胞レベルおよび動物レベルでの作用機序解析に必要な試薬・材料などの購入を予定している。さらに、本研究課題で得られた成果を誌上発表するための論文投稿費や国内外の学会・シンポジウムなどで発表するための旅費などとしても使用する計画である。
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