2014 Fiscal Year Research-status Report
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26570023
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西川 克之 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (00189268)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ピクチャレスク / サブライム / ツーリズム / 英国近代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、ヨーロッパ社会が近代化していくプロセスにおいて成立したツーリズムが、当初から大衆化への方向性とそれとは逆の大衆化批判を内在させていたという前提に立って、18 世紀中期のイギリスで行われはじめた「ピクチャレスク・ツアー」と、それと相前後して実践されはじめた山岳観光の展開に、ツーリズムの大衆化と大衆化批判の淵源を求めることができるのではないかという仮説を立て、歴史的一次資料に即してそれを論証するとともに、近代ツーリズムが発展していく際のダイナミズムの一端を観光文化学的論点に立って明らかにするというものである。18 世紀末葉にWilliam Gilpin、Uvedale Price、Richard Payne Knightらによって展開された美学理論にもとづいてピクチャレスクの美意識が一般化されたことによって、当時の中流層にまでその美的判断基準が受け入れられていくが、そこには新古典主義的な「遊び」の要素が含まれている。それに比してみれば、サブライムな山岳風景を求めてスコットランド高地地方や、19 世紀に入るとアルプスにまで遠征していくことになるツーリズムにはロマン主義的生真面目さが浮き彫りになってくる。やがてJohn Ruskin などはそうした景観を「ロマン主義的まなざし」(John Urry, The Tourist Gaze)の対象として神聖化し、徐々に大衆化していく観光登山に対して手厳しい批判を展開していくことになる。 3年計画の研究の1年目にあたる今年度においてはまずピクチャレスク理論およびサブライム理論について、またこうした理論に影響を受けたと考えられるツーリズムの紀行を収集し分析を加えようと試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本務先における組織運営等の業務によって、当初想定していた以上に大きな負担となり、時間の面においても労力の面においても、本研究課題に振り向けるエフォート率が予定通りには確保できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目においてはやり残したピクチャレスクおよびサブライムに関わる美学理論についての考察を継続した上で、1年目に収集した当時の旅行記や案内書などの一次資料に分析を加えて、ピクチャレスク・ツアーやサブライムの美意識に支えられた山岳観光の実践について考察を試みる。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた1次資料および2次資料のうち、発注手配が年度内に間に合わなかったものがあったため、次年度に繰り越すものである。また、一部物品については、3月に購入した物品の経費の支払が、会計手続のため翌月次年度4月となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度の購入できなかった資料は次年度に購入し、最終的な研究計画の遂行に支障がないように使用する予定である。また、一部物品については、実際上はすでに購入手続が全て(納品まで)完了しており、4月中に支払まで完了する予定である。
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Research Products
(1 results)