2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26570023
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西川 克之 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (00189268)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ピクチャレスク / フォトレスク / 表領域と裏領域 / 農村景観 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は年度末に英国ワイ川流域地域においてピクチャレスクツアーに関わる現地調査を実施する予定であったが、本務の都合により旅程を確保できず、調査を実行できなかった。そのため、調査に予定していた予算は主に、18世紀から19世紀にかけての英国における自然景観を対照とした観光に関わる1次資料および、当時の自然観のあり方やピクチャレスクの美意識を扱った2次資料を中心として、前年度に続き関連文献資料の収集およびその分析に充てた。研究成果としては2月に実施した国内他大学との観光研究のジョイント・ワークショップにおいて、ピクチャレスク概念を応用した枠組みを適用しつつ、観光資源としてイメージ化された農業景観と営農者の日常的生活の間に生じる齟齬について観光社会学的分析を行った。具体的には、丘陵地帯に展開する美しい農業景観が主要な観光資源となっている農村地域に向けられる観光のまなざしが、風景写真家の作品発表や丘の景観の画像や映像がコマーシャルに使われたことによって大衆化したことを確認した上で、それがピクチャレスク・ツアーにおける絵画に描かれたイメージを媒介とした美意識の形成と、そうした美意識にもとづいた自然景観の鑑賞という機序とアナロジカルに通底することを論じようとしたものである。こうして、ピクチャレスク・ツアーに萌芽のきざしを見出すことができる近代観光はメディアによるイメージの拡散という要素を抜きにしては考えられないのであり、本発表においては、こうした観光のあり方を、コピーとオリジナルの逆転、近代化と「脱埋め込み」、表領域と裏領域、観光者の特権化といった論点から分析し、農業景観を対象とした観光と営農者の日常的生活の間に生起する矛盾を止揚する手立てとして、食を媒介とした農と観光のすり合わせ、ストーリーを込められた表/裏の再構築といった可能性に検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」にも記したように、当初予定していた海外フィールド調査を、本務を優先せざるを得ない状況のために実行できなかった。そのため、現在のところ研究の遂行は関連文献の収集と分析およびそれにもとづいた暫定的成果の発表にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は断念せざるを得なかった海外調査を、新年度に実施する方向で研究の予定を組み立てなおしつつ、引き続き文献資料の分析を行って、最終的な成果の取りまとめにつなげていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外フィールド調査を、本務を優先せざるを得ない業務遂行状況のために実行できなかった。その結果、主に旅費として割り当てていた予算に残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の予定を組み直して、繰越分の予算とあわせた次年度助成金によって,海外実地調査を行う可能性を検討するとともに、文献資料分析を進めて最終的な成果発表に結実させる。
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Research Products
(1 results)