2016 Fiscal Year Annual Research Report
Boating Trips down Picturesque Rivers and Tourism in Sublime Mountain Scenery
Project/Area Number |
26570023
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西川 克之 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (00189268)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ピクチャレスク / 観光のまなざし / 風景のイメージ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度から引き続いて関連する文献資料を収集すると同時に、それらにもとづいて本研究課題のテーマに関わる考察を続けた。また、そうした研究活動で得られた知見を手掛かりにして、現代社会の観光のあり方についての応用的な分析を試みて、その成果を論文や研究発表の形にまとめた。 具体的には、18世紀から19世紀にかけての英国社会におけるピクチャレスク概念の展開やその影響について考察を進めるとともに、そうした概念が社会の成員に共有されていくプロセスについて焦点を当てながら、文化が市場で売り買いされて商品化していく状況と、審美的な趣味判断が社会的に拡散していくメカニズムといった要因に目配りする市民的公共圏の分析枠組みを参照して、美的判断基準の社会的な合意において、言論空間における情報共有およびその際のメディアの役割について検討を加えてきた。 そうした社会が近代化していく過程において成立した審美的な価値に関する合意の在り方は、それと重なるようにして一般的な市民層の間に慣習化していく観光という活動にも連動していくものであり、余暇活動の一環として日常とは異なる空間に出向き、選択的に何をどのように眺めるべきであるかを決定する際に、「観光のまなざし」という判断基準を提供していくことになる。ピクチャレスクという理念が社会的に広く共有されるということは、文字通り絵画という媒体を通して類型的な風景イメージが、現実の場所や空間に重ねあわされていくことであり、まなざされるべき適切な対象としてそうした場所に意味や価値を付与していくことにつながる。 こうした視点に立ってみれば、近代以降の特に視覚的なメディアの変遷や変質という要素を見落としてはならないものの、ピクチャレスク的な美的価値の共有はイメージ化された観光を分析していく上で、考察の基盤的な道具立てを与えてくれるものであると言ってよいであろう。
|
Research Products
(2 results)