2014 Fiscal Year Research-status Report
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26580127
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
中村 和之 函館工業高等専門学校, 一般科目人文系, 教授 (80342434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 淳哉 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 教授 (30205463)
小田 寛貴 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 助教 (30293690)
山本 けい子 函館工業高等専門学校, 一般科目理数系, 准教授 (90402221)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アイヌ / 奥州藤原氏 / 砂金 / 蛍光X線分析 / 交易 / 放射性炭素年代測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道の太平洋岸の遺跡からは、「かなまり」という特徴的な金属食器が出土する。これらの遺物は、奥州藤原氏への朝貢に対する対価として与えられたと思われる。ただし何が朝貢されたかはわかっていない。 一方、1970年代に奥州藤原氏が建立した平泉の中尊寺の修復を行った際、金工の専門家たちの間から、北海道の砂金が使われているのではないかとの意見が多く見られたが、その時点ではそれ以上の検討はなされなかった。 本研究は、北海道の砂金が平泉に運ばれていたのではないかとする仮説をもとに、平泉の中尊寺や、藤原秀衡の政庁である平泉館といわれている柳之御所遺跡から出土した金箔に用いられている砂金について、蛍光X線分析装置による非破壊分析を実施する。測定によって得られた数値を、東北北部ならびに北海道から産出した砂金と比較して、北海道の砂金が平泉にもたらされていた可能性を探る。 また、「かなまり」から採取した緑青(塩基性炭酸銅)に含まれる炭素を抽出して、放射性炭素年代測定を試みる。このように、新しい分析手法を用いて、遺物の制作年代あるいは埋納年代を明らかにする。 以上の成果を文献調査の成果や遺物の年代測定の結果と比較検討して、古代末期の北方世界における交易の実態を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先に述べたように、1970年代に奥州藤原氏が建立した平泉の中尊寺の修復を行った際、金工の専門家たちの間から、北海道の砂金が使われているのではないかとの意見が多く見られたことが知られている。このことは、北海道と東北の砂金が、見た目で区別することが可能であったことを示している。 本研究の前提として、北海道と東北の砂金の成分に違いがあることが論証されなければならない。しかし北海道と東北地方の砂金の成分についての先行研究は、金と銀との比率しか報告していない。そのため、微量元素の含有量を含む砂金の再測定の必要がある。 北海道・東北の約40地点の砂金についてサンプルを採集し、測定を行った。またクラスター分析の手法を用いて、北海道と東北の砂金が二つに分けられるかどうかを確認した。その結果、北海道と東北に特徴的な集団は確認できたが、相互に相手のグループに属するサンプルがあるため、明確に二つのグループには分けられないことが判明した。 つぎに、平泉町教育委員会の協力を得て、中尊寺に残る金箔や柳之御所遺跡から出土した金箔やルツボに残された金について、予備調査を行った。あるサンプルは、携帯型の蛍光X線分析装置を用いた非破壊による成分分析を実施することになる。また別のサンプルは、一部分を採取し、函館工業高等専門学校の装置で精密に分析することが確認された。 緑青(塩基性炭酸銅)を用いた年代測定については、十分な量を採取できるサンプルが少なく、うまく進んでいない。少量でも測定ができる手法の検討を含めて、早急に計画の練り直しを行う必要がある。 また、東北地方の中世。近世の文献史料の調査を進め、伝承を含む砂金関係の記録について情報を収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、北海道と東北地方の砂金のサンプル採集と成分分析を続ける。特に、実際に川に入っての砂金の採取を行う。また文献史料で砂金採取が記録されている地点での、砂金の採取をできるだけ進める。 つぎに平泉の中尊寺に残された資料、およびその周辺の遺跡から出土した遺物について、成分分析を行う。平成26年度の調査では、北海道と東北の砂金は成分的には明確に分けられないことが判明してきた。その一方で、北海道の砂金にはクロムが付着する可能性が高いので、ルツボに残っている融解された金を分析してクロムが検出されれば、それは北海道の金である可能性がきわめて高いことが明らかとなった。 以上のような検討をもとに、北海道の砂金が平泉に運ばれたかどうかについての、現段階での見通しを示す。 また緑青(塩基性炭酸銅)を用いた年代測定については、少量でも測定ができる手法の検討を含めて、早急に計画の練り直しを行う予定である。 最後に、東北地方の中世・近世文献史料の調査に基づいて、砂金の交易・流通についての分析を行い、流通の実態解明をめざす。
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Causes of Carryover |
年度当初の研究計画としては、平泉町に蛍光X線分析装置を持ち込んで資料分析を行う計画であった。しかし、平泉町の行政的な事情もあって準備が進まず、やむを得ず次年度に先送りとなったため、旅費に予定していた研究費が執行できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度のうちに分析資料の選定を追えているので、夏休み等の長期休暇を利用して、平泉町に蛍光X線分析装置を持ち込み資料分析を行う予定である。平泉町側との交渉を現在進めているところである。
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Research Products
(3 results)