2015 Fiscal Year Research-status Report
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26590045
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安部 由起子 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (50264742)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地域差 / 女性就業 / 発展途上国 / 経済発展段階 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の経済発展段階のデータの分析から、以下の結果を得た(Abe, Y. "On the convergence in female participation rates,"Hokkaido University Graduate School of Economics and Business Administration Discussion Paper Series A: No. 301に収録)。(1)日本の1930年から最近までのデータによると、日本の経済発展段階で女性就業率の地域差が縮小し、その変化が産業構造の変化と強くかかわっていた、(2)農業での就業の地域差は大きいが、農業での就業が日本の全地域で少なくなったことで、女性就業率の地域差も縮小した、(3)同じように、1990年代以降には、就業に地域差の大きい製造業での就業が縮小し、それによって女性就業率の地域差も縮小した、(4)この間、サービス業の雇用、および非正規雇用は日本の全地域で増加したが、サービス業や非正規雇用には地域差は小さい、(5)1980年代以降のマイクロデータを用いた分析によれば、地域差の縮小は、女性の労働供給の行動が変化したのではなく、女性の学歴選択と、結婚選択が変化したことによる部分が25-39歳の年齢層については大きい。さらに、日本の女性就業率の推移について、以下の結果を報告している(安部由起子、"日本における女性就業の地域差"に収録、刊行時期未定)。(1)日本の経済発展段階において、女性の就業率は長期的に上昇の傾向をもっていたものの、1975年あたりで一度低下している、(2)東京では女性就業率は1975年前後にも上昇し続けた一方、東京近郊やその他の大都市地域では女性就業率が低下した、(3)女性の就業率が特徴的に高い日本海側では、この時期の就業率の低下は小幅にとどまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の経済発展段階、およびその後の時期のデータの分析を通じ、発展途上国の女性就業の地域差を理解するうえでは、産業構造という視点からの分析を行なうことが重要であり有益であるという結論が得られ、発展途上国のデータ分析を行なう上での具体的作業の道筋をつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの日本の経済発展段階における女性就業の地域差の分析により、(1)農業、(2)製造業、(3)高学歴女性については教員としての就業、を区別して理解することが重要であることがわかった。今後は、現在データの整備と分析に取り組んでいる、発展途上国のデータ(IPUMSで収集されている各国の国勢調査のデータ、Demographics and Health Surveyのデータ、等)を分析を進め、結果を論文にまとめる。日本の研究を参考にし、途上国での地域差を分析する。
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Causes of Carryover |
日本の国勢調査のオーダーメイド集計データを研究に用いるため、その統計作成手数料を支出することで調整を行なっていた。2016年1月時点で、日本の国勢調査のオーダーメイド集計の集計様式を(独)統計センターと打ち合わせし、ほぼ集計様式を確定したが、その時点で統計センターより、2015年度については、オーダーメイド集計がすでに同センターが発注を受けている他の申出の予定で埋まっており、新規の発注は2016年4月以降の申出でないと受付られないという連絡を受けた。そのため、2015年度内にこの部分を使用しなかった。 また、2016年5月初旬に情報収集を目的として国際学会に参加するため、旅行の予定を2015年度中から立てているが、学会が実際に行われるのは5月であるため、その学会参加にともなう旅費については2016年5月に使用することで予定している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
日本の国勢調査のオーダーメイド集計を発注する。また、2016年5月には国際学会に出席し、情報交換と意見交換を行なう。
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