2014 Fiscal Year Research-status Report
企業・労働者マッチング・パネルデータを用いた賃金・生産性ギャップの分析
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26590048
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
小滝 一彦 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 上席研究員(非常勤) (60314431)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 労働経済学 / 賃金と生産性の比較 / ミンサー型賃金関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
人的資本と賃金の差異については、これまで、関数型が半対数型であるために、企業単位で集計すると、労働者の数だけの非線形項が生じて、有効な計量分析が行えないという深刻な問題点があり、労働経済の発展の障害となってきていた。例えばLazear and Moore (1984)は賃金労働者の生産性を測定できず代わりに同年齢の自営業者の収入で代理し、Medoff and Abraham (1980)は生産性の代わりに人事評価結果を用い、Shaw and Lazear (2006)は個人の作業数量で代理した。Hellerstein et al. (1999), Crepon et al. (2002), Ilmakunnas et al. (2004)らは、労働者グループ間の相対生産性を計測したが、依然として賃金と生産性のギャップは測定不能であった。ここで確立した方法は、半対数型の賃金関数と、生産性関数の差異を定式化してから処理することで、人的資本関数と生産関数を、容易に一体化させることができる点で画期的である。 この人的資本と賃金の差異の計測についての理論的研究については、国際学会において発表を行った。 "A New Method to Measure the Gap between Wage and Productivity", Western Economic Association International 11th International Conference being held 8-11 January, 2015, in Wellington, New Zealand. また、データ分析を進展させるためのモデル設計を行った。データ個票申請については、具体的モデルや集計表の形式を先に決定することで、申請後の分析作業の効率化を図ることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで労働経済の研究の障害となっていた賃金と生産性の差異の計測方法を、ほぼ確立したことで、今年度からのマッチングデータ分析による実証の目処が立った。この分析は、ベッカー、ラジアーらの研究を統一的に検証する挑戦的な研究であり、また、この分析により、賃金と生産性の比較が行えることで、多くの関連研究が進展するという萌芽的な研究である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、初年度において先行的に構築した実証モデルを念頭に、マイクロデータの構築を行う。賃金構造基本統計調査、事業所・企業統計調査、および企業活動基本統計調査の目的外使用許可を得て、企業・労働者マッチング・パネルデータの構築を行う。上記で得られた賃金・生産性ギャップ関数と、賃金関数の係数を積み上げることで、労働者の生産性関数を導出する。賃金関数の推定は、ギャップ関数の係数の推定(2)の際と同様に、企業固定効果、業種×年のビジネスサイクル固定効果をコントロールして行う。 この生産性関数は、賃金関数+ギャップ関数であり、賃金関数との水準の差であるギャップ関数は上述のとおり切片項が識別され推定されているため、ギャップ関数を用いて、労働者の賃金・年功プロフィールと、生産性・年功プロフィールをひとつの座標軸の上に描き、交点を確認することができる。賃金のプロフィールを生産性のプロフィールが追い抜く形で交差していればベッカーの主張と整合的であり、逆に生産性のプロフィールを賃金のプロフィールが追い抜く形で交差していればラジアーの主張と整合的である。
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Causes of Carryover |
初年度に実証モデル構築を先行して行い、2年度目にマイクロデータ構築を行うこととしたため、リサーチアシスタントの謝金や、諸資料の物品費の執行が後ろ倒しになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マイクロデータ構築のため、リサーチアシスタントの謝金と、関連資料の購入に費用を要する。また、研究発表のため、旅費として費用を要する。
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Research Products
(1 results)