2015 Fiscal Year Research-status Report
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26590090
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山中 浩司 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (40230510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩江 荘介 宮崎大学, 医学部, 准教授 (80569228)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 希少疾患 / 病の語り / 社会的認知 / 難病対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、4月から10月までに新規に9件のインタビュー調査(のべ20時間あまり)を実施し、支援団体(「希少難病ネットつなぐ」)、患者団体代表者(HAEJ,FabryNEXT)との協議、聞き取りを4回行った。2015年10月末時点で、インタビュー対象者は、インタビュー時に難病対策または小児慢性特定疾患指定疾患で医療費の公費負担となっている患者17名、研究症例分野対象7名、その他希少疾患10名、病名不明患者7名で、これらについて、医学的診断、社会的認知、主観的困難度を基準に5つのタイプに分類し分析を進めている。これらの基準は、病の医学的次元、社会的次元、個人的次元の三つの次元に関連し、分析はこれらの相互関係を中心に行った。この結果、希少疾患においては病の社会的次元における社会的認知という側面が一般的疾患と比較して著しく弱いため、「病人役割」を取得する点で多大な困難を引き起こしていることが明らかとなった。分析成果の一部は、5月に日本保健医療社会学会(東京都・首都大学東京)、9月にイギリス社会学会医療社会学大会(イギリス・ヨーク大学)において報告を行った。12月には、オーストラリアの希少疾患患者支援団体RVAの事務局担当者からオーストラリアにおける支援状況について聞き取りを行った。10月よりこれまでの43件(うちフォローアップ調査2件)のインタビュー調査について中間報告書のとりまとめを行い、2月より協力者に対して報告書に記載される引用文の確認作業をお願いしている。2016年6月ごろに関係団体および機関に対して配布する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビュー調査は、公費負担対象患者、研究症例分野対象患者、その他希少疾患患者、病名不明患者、各12名の合計48名を想定していた。現在41名の調査を終えているが、内訳は公費負担疾患患者にやや偏しており、その他希少疾患と病名不明患者の聞き取りが不足している。希少疾患患者は、全国に散在しており患者団体も整備されていないため、区分を厳密に守ることは困難である。また、研究期間中に国の難病政策が大きく変動し、研究奨励分野の多くの対象疾患が公費負担対象となったため、今後は、医療費支援対象疾患、その他希少疾患、病名不明の3グループで各15名程度を想定し調査を進めることとした。このためには、2016年度に病名不明患者8名程度の聞き取り調査が必要であるが、現在の進捗状況では十分に実施可能と考える。なお、フォローアップ調査も随時実施し、その後の状況について補足している。計画当初より研究予算が削減されているため、海外での学会報告などの旅費を研究費から支出すると調査旅費に不足を来すため、資金的な問題については検討が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で述べたように、国の難病政策は2015年度より大幅に変更され、公費負担対象疾患は大幅に拡充された。これにより、医療費の直接の支援がなかった研究奨励分野の対象疾患患者という区分が重要性を失ったと考える。今後の調査では、上述のように医療費支援対象疾患、その他の希少疾患、病名未確定疾患の3グループで聞き取りを進めることとする。現在調査を終えている41名のデータについては、難病対策および小児慢性特定疾患制度によって医療費の公費負担が行われている疾患当事者17名、医療費の公費負担がない疾患当事者17名、病名不明または診断未確定疾患当事者7名となり、病名不明患者の調査が不足している状況である。希少疾患当事者に特有の生活状況は、疾患の医学的地位、社会的認知に密接に関係する事項が大半を占めており、この問題は、病名の確定しない疾患においてもっとも顕著になるため、次年度はこのグループの調査を重点的に行いたいと考える。また、中間報告書を次年度前半にとりまとめ関係機関・団体の意見を聴取し、今後の希少疾患患者の社会状況改善のための方策を検討したい。
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Research Products
(3 results)