2015 Fiscal Year Research-status Report
「学びの共同体」における数学の教授・学習過程に関する探究
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26590237
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
関口 靖広 山口大学, 教育学部, 教授 (40236089)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 学びの共同体 / 学び合い / 中学校数学 / 理論と実践 / ベテランと若手 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は年間を通じての数学の授業での教師と生徒たちの変容を調べることに焦点をおいた。ベテランの中学校数学科教員1名から承諾を得て,その教員の担当授業の1クラスを選出して,27年6月から28年3月まで,そのクラスの数学の授業を継続的に参観し,ビデオ記録を行った。その教師には1学期2回と2学期末に1回のインタビューを実施した。また,市内で開催された公開授業研究会も頻繁に参加した。「学びの共同体」の全国研究大会にも参加し,全国的な取り組みについて情報収集した。それらのデータより,いくつかの暫定的な知見が得られた: 1 「学びの共同体」実践の校内研修が盛んな中学校であっても,教員間の「学びの共同体」実践への理解の程度はさまざまである。特に,ベテランの教員は「学びの共同体」の理論に接する以前に積み重ねた経験が授業実践を色濃く形作っており,「学びの共同体」実践とのギャップに戸惑う姿が見られた。他方,若手の教員の方が,「学びの共同体」実践を積極的に取り込んで自分のものとしている場合が見られた。 2 教員の間の「学びの共同体」理論への理解は不十分とみられる。研修では主に研究授業と協議会が中心であるため,実践的な理解に限られている。そのため,「学び合いにすると生徒の学習規律が乱れるので,一斉授業に戻す」,というような逆行も見られた。校内研修でも,理論への理解を深めるような定期的なセミナー等が必要と思われる。 3 「学びの共同体」実践への取り組みが,一時的にとどまる場合も見られた。一斉授業で日頃は進めてしまっているために,学び合いのための働きかけの仕方を試したり改善したりする経験やノウハウの蓄積がなく,公開授業でいきなり学び合いを取り入れて,不十分なまま終わる場合が見られた。教師の日頃からの取り組みと他の教師との日常的情報交換が重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,研究協力校が早期に決まり,年間を通じたデータ収集が行われた。その結果,膨大なデータが集まり,その分析に多くの時間が必要となり,暫定的な段階で終わっている。
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Strategy for Future Research Activity |
市教委との連携協力の中で,研究代表者に対して,これまでに得た知見をもとに,特定の中学校で「学びの共同体」実践のスーパーバイザーの役割を務めることを要請された。この展開は当初の研究計画には含まれていなかったが,中学校の実践のスーパーバイザーとして関わることは,学校改革のアクションリサーチへの参画であり,実践の現場へのより深い理解と改善への実践的知見を得るためにきわめて重要な機会と考えて,その要請を引き受けることになった。 最終年度は,これまで得られたデータの分析および最終年度のアクションリサーチから得られた知見をまとめて,学会発表等を行い,報告書を印刷する予定である。
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