2014 Fiscal Year Research-status Report
オーストラリアの歴史教育におけるキーコンピテンシー育成の理論と実践
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26590242
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
下村 隆之 近畿大学, 教職教育部, 講師 (50633781)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オーストラリア / 歴史教育 / 中等教育 / キーコンピテンシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は挑戦的萌芽研究のカテゴリーによって採択された研究のため、日本国内において過去の研究の蓄積は非常に乏しい。したがって、初年度の研究は研究テーマに関しての基礎的資料の収集を中心に行った。具体的には、ナショナルカリキュラムやオーストラリア最大の人口を抱えリーディングステートでもあるニューサウスウェールズ州のカリキュラム分析、あるいは大学入学資格試験(HSC)の特徴および内容分析、現地で使用されている教科書の収集および分析、教材の入手、ウェブ教材の収集・分析を実施した。 また、これらの基礎資料の分析を基にして、現地調査を16日間実施した。調査内容は具体的には次の3種類に分けられる。①現地専門家への聞き取りおよび関連資料収集、②大学図書館での資料収集、③現地校訪問調査 ①現地専門家への聞き取りは、シドニー大学で州の歴史科目のカリキュラム作成に参加した研究者、教育政策の専門家、教科教育方法論の専門家等への聞き取り調査と、関連する文献の収集を実施した。 ②大学図書館での資料収集作業は、上記の専門家のアドバイスに基づき、図書館で資料を検索し、電子データやコピーデータとして収集した。 ③現地校訪問は、6校の中等教育の学校を訪問し、実際の歴史授業の参観、教師とのディスカッション、オリジナルテキストや教材の収集をおこなった。 本来2年目より実施する現地校訪問調査を前倒しできたことにより、次年度以降の調査はさらに研究テーマの深部に入っていくことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも示した通り、次年度に予定していた現地校訪問調査を初年度より実施できたことによって、カリキュラムや歴史教育の内容が実際に学校現場において如何にして実践されているのか、具体的に確認することができた。また、現地教師への聞き取りでは、現在実践されている歴史教育のメリットのみならず現場で抱える課題等も抽出することができ、非常に有益なものとなった。さらにビジョンシンキングやガボットと呼ばれる教育方法とそれに基づいた教材なども複数入手でき、これらは日本の国内での教材開発として将来紹介していていくことを可能とさせることができた。 他方、専門家への聞き取りは歴史カリキュラム作成への歴史的経緯や社会的要請、現場への周知への経緯など、オーストラリアが向かっている歴史教育の全体像や、細部に関わる課題に至るまで、多方面にわたる情報を入手することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、当初の計画以上に進展していることからも、研究テーマの深部に入っていく、またこの研究が単に理念上のもので、実際の学校等における教育現場に役立たないものとならないよう、具体的な教材や方法なども幅広く入手し、それを広く日本社会に紹介し還元することで、理念と実践の結合を図りたい。 同時に学校現場がかかえる課題をさらに多く収集することにより、政策と現場との差異や改善が必要とされる点に関して抽出を試みる必要があり、さらなる現地調査が必要となる。特に学校は、それぞれの特色や地域に根差した特徴があるため、公立、私立の区分をはじめとして幅広く異なったタイプの学校の実践やデータを入手することが、この研究を偏ったものにならないよう補強させ、研究の質を高めることを可能とさせる。 また、現段階までの成果を徐々に教育界をはじめとして各方面に報告していく必要性もある。特に初年度は、研究データの収集にのみ活動したため、研究成果の報告がなされていない。それを次年度以降に結び付けていく。
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