2014 Fiscal Year Research-status Report
光量子干渉計を用いたCS重力理論の検証実験に向けて
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26610052
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 繁樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80321959)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 相対論 / 重力 / 量子光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CS重力理論の検証実験を実現する手段として、光ファイバ干渉計を用いる方法についての検討および初期検証を行うことを目的としている。我々の計算によると、長さ50kmの光ファイバを、10m四方にループ状に1250回巻いたサニャック型干渉計を利用した場合、10のマイナス10乗程度の位相測定精度を実現できれば、従来の上限値の向上が可能であることが分かっている。現在、光ファイバの通信波長帯での損失は最小0.15dB/km程度が達成されており、50kmでも7.5dBと、十分な強度で干渉信号は観測可能である。また、10のマイナス10乗の位相測定精度は、10J程度の光量で得られる標準量子限界に相当するが、本検証実験では10の3乗秒程度の積算が可能であることから、現在市販されている数十mW程度の光源を用いることで、原理的には達成可能と考えられる。本研究では、小型光ファイバ干渉計を構築、そのプロトタイプを用い、予想される様々な雑音についてその原因の究明と対策などを課題としている。今年度は、主に小型光ファイバ干渉計ならびに光源の検討を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、小型光サニャック干渉計の設計等を主に実施した。まず、従来の光ファイバ干渉計の研究状況の調査を実施した。光ファイバ干渉計に必要な光源として、広帯域のスーパールミネッセントダイオード光源が適していることを確認した。この調査を元にして、長さ50mの光ファイバを用いた干渉計の設計を行うと共に、調整用の微動光学ステージ、計測用のオシロスコープ、および、干渉計構築時に調整用として使用するレーザー光源用バンドパスフィルタの購入などを行った。また、航空機用のファイバジャイロにおいては、リング共振器に入射する光に適当な位相変調(binary phase shift keying)をかけることで、非常に高い信号雑音比を達成している。もしも、この方式を、CS重力理論の検証実験に適用できれば、非常に魅力的である。この点は新たな研究課題として、次年度以降も、連携研究者と協力して、継続して検討することとした。また、干渉計の性能を向上するには、用いる光源の広帯域化が非常に重要である。しかし、スーパールミネッセントダイオードの帯域は、せいぜい100nm程度に限られている。我々は、パラメトリック下方変換を用い、中心波長約800nmで、300nm以上の帯域を持つ、超広帯域低コヒーレンス光源の開発にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、引き続き、長さ50mの光ファイバを用いた、高感度光サニャック干渉計の構築とそれを用いた検討を進める。偏波保持ファイバと広帯域スーパールミネッセントダイオード光源と光ファイバーカプラを組み合わせた、光サニャック干渉計を構築する。広帯域スーパールミネッセントダイオード光源については、本来は通信波長帯域の光源の新規購入が望ましいが、予算が厳しく限られていることから、研究室で保有している、可視近赤外域の広帯域スーパールミネッセントダイオード光源の利活用を検討している。もし可能であれば、昨年度実現した、超広帯域低コヒーレンス光源の適用可能性も検討する。構築したファイバ干渉系を利用して、信号雑音比を検証するとともに、その原因と対策について、検討を進める。 また、昨年度に引き続き、位相変調信号を利用したリング共振器を用いたCS重力理論の検証実験の可能性についても、連携研究者の浅田教授と共に、引き続き検討を進める。浅田教授らによる元々の検証実験の提案は、中性子干渉計を用いたもの[Physical Review Letters, 109, 231101 (2012).]であったが、昨年度までに、光サニャック干渉計を用いた場合への理論へと拡張できている。その研究を元に、位相変調(binary phase shift keying)を施した入力光を用いた場合の検討を行う。さらに、スクィーズド光源を利用した場合に得られる位相測定精度の向上や、量子もつれ光源と多光子量子干渉の利用可能性などについて検討を進める。
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Causes of Carryover |
光ファイバ干渉計の実験装置の部品(光源、ファイバ)の購入について、所有物品との利活用について検討を進めたため、一部使用を保留した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
部品を選定し次第、購入し、実験装置をくみ上げる予定である。
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