2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26610152
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大橋 勝文 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (00381153)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 温室効果ガス計測 / 濃度データ解析 / 並列計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気中の二酸化炭素の増加が地球温暖化をもたらすため、世界の多くの研究機関で大気中の二酸化炭素濃度の計測が行われている。しかし、火山からの大規模な二酸化炭素排出を対象にした研究は少ない。そこで、二酸化炭素濃度の計測制度向上のための計測システムの改善とGPUによる解析速度の高速化を行った。同時に、計測用の機器を集め、鹿児島大学の近くの活火山である桜島から排出される二酸化炭素の計測準備として、計測装置一式を揃え、その設置する前の動作確認と設置場所の整備を行った。 解析精度向上に関しては、解析システムの向上を国際的に日本の計測の基準とされている環境研究所のFTS(Fourier-transform spectrometer)の観測結果とFiber-Etalon Solar計測器からのデータを解析した結果の比較を行った。研究開始時は、観測データの解析には、ワイオミング大学から報告されている1日にUTC 0時と12時のゾンデデータのうち0時のデータをもとに地上の気圧データによる補正を行った高度気象データを使用していたが、より正確な解析を行うために、Goddard Earth Sciences Data and Information Service Centerから報告されている3時間おきの再解析データを時間・空間的に補間を行うことで、観測地・観測時間の高度気象データを見積もった。このデータを用いて、FES-Cによる複数の観測地での観測データを正確に解析することができた。 解析速度の高速化に関しては、Nvidia社が提供するGPU向け統合開発環境のCUDA(Compute Unified Device Architecture)を用いて並列化を進めた。濃度算出に用いているリトリーバル法を用いた解析に対してGPUを適応した結果、6セルを搭載したCPUを用い並列化なしの場合と比較すると約25倍、6セルの並列化の場合では5倍もの高速化を実現した。GPUによる高速化した計算手法での結果は、GPUを用いない場合での結果と指数表記にて小数点5桁まで一致した結果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
桜島の観測に関しては、明星電気製のFiber-Etalon Solar計測器を当初、借りる予定でしたが、明星電気側の都合により、27年度に貸してもらうこととなり、そのため、名古屋大学の川崎先生より、Optical Spectrum Analyzer(OSA)による温室効果ガス濃度の計測装置を借りて、桜島から排出される温室効果ガス観測の準備を進めている。 一方、データ解析に関しては、高速化と同時に解析結果の正確性について他の研究機関で解析した結果と比較する。具体的には、つくば市にある国立研究開発法人国立環境研究所内に設置したFiber-Etalon Solar計測器を用いて観測したデータを当研究室で開発した解析システムにより解析し、国立研究開発法人国立環境研究所のFTS(Fourier-transform spectrometer)で観測し報告しているデータと比較した結果、数ppmの差で一致した。しかし、平成26年度の当初は、気象データにワイオミング大学から報告されているUTC 0時(日本時間9時)を基にした高度・気象データを使用しているため、夕方になると解析結果に差が生じていた。そこで、Goddard Earth Sciences Data and Information Service Centerから報告されている3時間おきの再解析データを時間・空間的に補間を行うことで、観測地・観測時間の高度気象データを見積もることができた。このデータを用いることで、FES-Cによる複数の観測地での観測データを正確に解析することができた。しかし、この手法を使用する場合には、データを入手する手間を以下に減らすかが問題となっていたが、データベースに自動的にアクセスして必要なデータを入手する手法を取得できたので、今後は、Goddard Earth Sciences Data and Information Service Centerのデータを基に解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、本格的に観測を主に進める予定です。まずは、桜島からは排出される温室効果ガスを観測するために、鹿児島大学の情報生体システム工学科棟の屋上に設置して、観測を始める。観測時に、桜島の灰が望遠鏡の窓に積もるなどの影響を調べる。影響が大きい場合には、数分から数十分おきにエアブローを行う機構等を望遠鏡に設置する機構を加える予定である。桜島観測には、グレーティングにより観測波長を掃引することで吸収スペクトルを計測するOSAで観測を行いつつ、明星電気で開発中のFiber-Etalon Solar計測器を借りて二種類の観測器を揃えた時点で、Fiber-Etalon Solar計測器では二酸化炭素濃度の計測に専念させ、OSAに関しては複数の波長領域での観測を行うことで二酸化炭素以外の温室効果ガスが計測できるかを試みる予定である。これは、硫黄化合物のカラム濃度変化を計測した事例が極めて少ないためある。 また、昨年度から行ってきた解析システム改良だが、解析速度の高速化はNvidia社が提供するGPUを用いた並列処理技術をさらに進める。そのためには、K20に代表されるGPU演算ボードを利用する。以前のバージョンでは多重のループの場合には最も内側のループに対してのみしか並列化が行えなかったが、K20では多重ループに対しての並列化が可能になったので、このアーキテクチャを利用してより高速の解析を試みる予定である。また、解析に必要なデータベースのサイトから自動的にデータを入手して解析用のフォーマットに変換するツールを作成する。これらのツールと高速化された解析システムとを統合することで、複数台の観測機器の観測データをより効率的にかつ高速に解析作業を進める。
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