2014 Fiscal Year Research-status Report
アルミニウム-ハロゲン結合を有するアルモールの合成と性質の解明
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26620028
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
時任 宣博 京都大学, 化学研究所, 教授 (90197864)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルミニウム / 電子不足共役系 / アルモール / アルキン / 4π電子系 / 有機典型元素化学 / 有機金属化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
環状4π電子系化合物であるボロールは、反芳香族性への興味に加え、高い電子受容性やルイス酸性を示すことから機能性分子の観点からも盛んに研究されている。一方、ボロールの高周期類縁体であるアルモールに関しては、合成例がほとんど無く物性や反応性は明らかにされていなかった。本研究では、アルミニウム上にハロゲン置換基を持つ高反応性化学種であるハロアルモールの合成と性質解明を目的とした。 本年度の研究では、アルミニウム上にクロロまたはブロモ基を導入した1-ハロゲノアルモールの合成・単離に成功した。これらのハロゲン置換アルモールは、結晶中ではブタジエン部位の炭素原子が2つのアルミニウム原子間を架橋した二量体構造をとっていたが、溶液中では単量体との解離平衡が存在することが、温度可変NMRスペクトルおよびルイス塩基との錯形成から示唆された。1-ブロモアルモールに対し種々の求核剤を作用させ、アルミニウム上での置換反応を検討したところ、かさ高い求核剤である2,4,6-tri-tert-butylphenyllithiumや(Me3Si)2NLiとの反応において、アルミニウム上に置換基が導入されたアルモール誘導体が得られた。また、1-ブロモアルモールとアルキン類との反応を行ったところ、Al-C結合への二分子のアルキンの挿入が進行し、含アルミニウム9員環化合物である1-alumacyclonona-2,4,6,8-tetraene (1-brumoalumonin)誘導体が生成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画で目標としていた、アルミニウム上にハロゲン置換基を導入した新規アルモール誘導体である1-ブロモアルモールおよび1-クロロアルモールの合成に成功し、それらの構造をX線結晶構造解析により明らかにすることができた。ハロゲン置換アルモールと種々の求核剤やアルキン類との反応性を検討し、アルミニウム上での置換反応による官能基化アルモールの合成や、Al-C結合へのアルキン挿入による環拡大反応といったユニークな反応を見出した。一方、ブタジエン部位に共役系置換基としてフェニル基を導入したアルモールの合成も検討を行ったが、スピロ型のアルミネートイオン誘導体が生成し、目的としたアルモールの単離には至っていない。今後、さらに置換基や反応条件の検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画どおり、前年度に合成したハロゲン置換アルモールの電気化学的性質を明らかにした上で、アルカリ金属などの還元剤との反応によってアニオン種の合成を試みる。また、ヘテロ元素求核剤や金属錯体との反応によって、アルミニウム上に官能基を導入した新規アルモール誘導体のモジュラー合成を試みる。
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