2014 Fiscal Year Research-status Report
草食性エビ・カニ類共生細菌群集を用いた高効率バイオマス分解システムの構築
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26630434
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
三宅 克英 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (90252254)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リグニン / アカテガニ / ヨコエビ / バイオマス / セルロース / グアヤコール / Shewanella / Bacillus licheniformis |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はこれまでのアカテガニ由来の細菌に加えて、能登海岸林及び河川由来のヨコエビ、イソメ、フナクイムシからの細菌の単離を試みた。その結果、複数のバイオマス分解性細菌を新たに単離することができた。ヨコエビからは7株、イソメからは5株、フナクイムシからは7株のバイオマス分解細菌を単離した。バイオマス分解活性のうち、セルラーゼ活性についてはCMC-Congo Red法を用い、リグニン分解活性については市販リグニン(関東化学)含有培養プレートを利用した方法を用いて一次スクリーニングを行った。結果としてハロ(培養コロニーのまわりにできる白く抜ける分解領域)の形成を判断材料とした。細菌の同定は16s rRNA遺伝子をゲノムから増幅して塩基配列を解析して行った。ヨコエビの7株はPseudomonas Koreensis, Pseudomonas taiwanensis, Bacillus pumilus, Shewanella sp, Bacillus licheniformis 3株であり、特に活性の高いShewanella spとBacillus licheniformisを今後の研究対象菌株とした。この菌種はアカテガニから採取された活性の高い細菌群と同じであり、甲殻類由来細菌の共通性を示すものと考えている。一方フナクイムシ、イソメからの菌株はすべてがBacillus属であった。 アカテガニ由来細菌群のうち、Shewanella putrefaciens (LB5)とBacillus licheniformis (LB1)のリグニン分解酵素活性についてさらに解析を進めたところ、グアヤコール法でLB5株が顕著な活性を示すことが判明した。この活性はこれまでによく知られたリグニン分解性白色腐朽菌の4分の一程度であり、細菌としては強力なものと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では草食性のアカテガニあるいはヨコエビを材料として、その未知なるバイオマス分解システムを明らかにし、バイオマス有効利用技術への応用をはかることを目的としている。本年度はすでにアカテガニとヨコエビ、さらには当初の予定にはなかったイソメ、フナクイムシからもバイオマス分解細菌の単離に成功しており、目的の50%程度は達成したものと考える。得られた細菌群の中には顕著な活性を示すものも含まれており、今後の研究や応用に期待できる。またこれらの細菌はセルロースの存在下でリグニン分解活性を増強されるというこれまでに報告のない現象を示しており、学術的な研究価値も高いと思われる。アカテガニの消化管由来の未知なるバイオマス分解システムの解析という面では、消化管微生物群集解析を次世代シーケンス法を利用して行っており、その詳細が明らかになれば、単離菌の解析とあわせて多くの情報が得られるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策に関しては、さらなる高活性細菌株の取得を難培養微生物取得も含めて進めるとともに、既に得られた単離細菌の解析も進める。特にリグニンの分解活性についてはHPLCを用いた分子量解析を行い、どの程度分解が進んでいるのか観察する。また単離細菌のうち特に高い分解活性を示したもの、アカテガニ由来のLB5株、LB1株、LB13株等については酵素遺伝子の特定を行う予定である。遺伝子の単離にはトランスポゾンランダム変異導入法を用いる。Tn5にエリスロマイシン耐性遺伝子を導入し、トランスポザーゼとともに当該菌株にエレクトロポレーション法で導入する。得られたエリスロマイシン耐性株のうち、リグニンプレート上でハロの形成をできなくなった変異株をスクリーニングする。変異株のゲノムからトランスポゾン近傍の遺伝子を解析し、酵素遺伝子であるかどうか判定する。判定は塩基配列解析と強制発現株による活性測定を指標として行う。セルロースの存在によるリグニン分解活性の増強メカニズムについての解析も行う。これはバイオフィルム形成との関連を中心として解析する。現在のところセルロースやリグニン存在下でのバイオフィルムの形成や接着力が多くの菌株で増強されていることが観察されている。また応用方面の研究も進める。杉チップなど実際の木材等に対する各菌株の反応性を調べ、どうすれば実用化できるかの検討も始める。
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Causes of Carryover |
最後に購入したディスポーザブルピペットが想定より安く購入できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額189円は翌年度分として請求した助成金とあわせて使用する。
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Research Products
(5 results)