2014 Fiscal Year Research-status Report
オゾンとCO2複合ストレスがカラマツ属の成長と共生菌類の種多様性に及ぼす影響解明
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26660119
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小池 孝良 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10270919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉井 裕 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50281796)
渡辺 誠 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50612256)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | OTC / グイマツ雑種F1 / 高CO2 / 高オゾン / 地表付近オゾン / 光合成 / 共生菌類 / 外生菌根菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
深刻化してきた地表付近のオゾンと400ppmを越えたCO2濃度の複合環境下におけるカラマツ属と共生する外生菌根菌(ECM)を中心とした根圏環境の網羅的解析から、ECMへの感染率と種組成を解明する事にある。天井が開放され、野外と同様の光・温湿度変化が起こるオープントップチェンバー(OTC)を設置し、研究協力者から分与されたグイマツ雑種F1のクローンを苗畑に設置したOTCへ直植えし、測定・解析を行う事により、現実に近い条件での環境変化に対する根圏での共生関係を解明する足がかりが出来た。このために不可欠な生理生態と栄養生理、そして根圏環境の解明を協力し分担研究を行うことで、最終ゴールを目指す。 植え付けた材料の一部を掘り取り、翌年に予定するDNA解析の予備試験を行った。これには、顕微鏡を用いて感染率と根端の分枝数を観察した。初年度のグイマツ雑種F1の成長は高CO2区>対照区>高CO2+O3区>O3区の順に大きかった。感染したECM種数も、この順に多かった。すなわち高CO2区ではイグチ属を中心にラシャタケ属、Cadophora属、ラッカリア属、イボタケ属などが感染していたが、高O3区ではイグチ属が80 %以上を占めていた。生育環境が悪化し光合成が抑制されても、結局、カラマツ属のスペシャリストと考えられるイグチ属)は不可欠なパートナーなのだと感じる。 カラマツ属の成長はECMに依存した成長を行う。特に、リンの欠乏症状が出やすい火山灰土壌ではECMとの共生は必須である。 一方、初めにも述べたがカラマツ苗が入手出来ないくらい「造林熱」が再来している。低コスト造林ではコンテナ苗の量産が期待されているが、その肥料は農業用である。リン資源の枯渇が予想される中で、リン含有率の高い農業肥料への依存は避けるべきである。このためには、土壌からリンと水分を宿主へ提供するコツブタケのように緑化資材として利用出来る微生物の探索に役立つ可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グイマツ雑種F1の2年生の山行き苗が予定通り入手出来たことが大きい幸運である。この数年、育苗に失敗し、ニホンカラマツ苗木は入手が極めて困難な状況にある。研究協力者の対応の予算が初年度の実験を可能にした。この材料の感染している外生菌根菌(ECM)を調べ、褐色森林土の試験地に設置された天井の開いたオープントッップチェンバー(OTC、既存設備)にグイマツ雑種F1クローン苗を植え、浄化空気、オゾン(60ppb:環境基準上限)、CO2(600ppm:2040年頃)、オゾンとCO2の複合処理を与え、光合成機能と成長データを得つつある。細根やECMのDNA解析など根系調査を行う。従来法により光学顕微鏡下で菌根形成根端のタイプ分けを行い、形態タイプ毎にrDNAを含むITS領域の塩基配列によってECMの種を同定する。ここまでの実験が上手く進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
天井の開いたオープントッップチェンバー(OTC、既存設備)に植え付けたグイマツ雑種F1クローン苗3年生を、浄化空気、オゾン(60ppb:環境基準上限)、CO2(600ppm:2040年頃)、オゾンとCO2の複合処理を与え、光合成機能と成長データを得つつ、最終年には掘取りを行なう。樹体の化学分析をプラズマ発光法で行う。細根やECMのDNA解析など根系調査を行う。従来らかの定法により光学顕微鏡下で菌根形成根端のタイプ分けを行い、形態タイプ毎にrDNAを含むITS領域の塩基配列によってECMの種を同定する。パイロシークエンス法による共生菌類の網羅解析も行う。得られたデータからECM多様性の解析や樹体の各部位ごとのリンを中心とした化学成分の解析からECMの役割を推察する。 具体的には、根系を採取し、流水で洗浄し付着した土壌を除去した後、根端部のみを集めて冷凍庫(-25℃)で保管する。凍結したサンプルを乳鉢に移し、液体窒素を加えながら粉砕する(もしくは本研究で購入を予定するRoot crusherを使用)。共生菌のDNAはCTAB法(もしくはDNeasy Plant Mini Kit)により抽出する。共生菌のITS領域のシークエンスを解析するために、Nested PCRの第一段階としてITS1F、ITS4プライマーセットを用いてITS全領域を増幅する。これらの材料を一部委託して種の推定を行い種多様性を解析する。
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Research Products
(2 results)