2014 Fiscal Year Research-status Report
新たなアクチン線維制御分子によるシナプスバイオロジーと自閉症の解明
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26670089
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
黒田 一樹 福井大学, 医学部, 助教 (60557966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 真 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 教授 (10222019)
八木 秀司 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10303372)
謝 敏カク 福井大学, 医学部, 助教 (40444210)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミオシン / スパイン / NMDA受容体 / 海馬 / 大脳皮質 / 自閉症 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症の原因となる遺伝子はシナプス関連分子が多く、シナプスでの神経伝達の異常が原因と考えられるが、その発症メカニズムは未だ不明な点が多い。神経伝達においてシナプスの機能変化は重要で、後シナプスである樹状突起上の棘突起(スパイン)の変化はシナプスの可塑性等に深く関わる。我々は新たなアクチン線維関連分子LUZP1の解析から、LUZP1がスパインの形態や機能を制御することを見出した。最近、自閉症の患者において、LUZP1が大脳皮質の領野間で発現量に差がある遺伝子群の上位に位置することが報告された。以上の事から、自閉症におけるLUZP1の発現変化はスパインの機能に影響し、大脳皮質の領域間における神経連絡の異常を生じさせると考えられ、LUZP1の機能解析は自閉症の発症/病態メカニズムの新たな解明に繋がると期待される。
初年度は、自閉症モデルマウスにおけるLUZP1遺伝子の発現部位の解析をLUZP1-lacZマウスを用いて行う予定であったが、予定よりも早くLUZP1-cKOマウスの作成が出来たので、予定を早めてLUZP1-cKOマウスを用いて行動解析実験や電気生理学的実験を行った。結果、LUZP1-cKOマウスとコントロールマウスと比較して、電気生理学的解析では差を見出すには至らなかったが、行動学的解析においては不安様行動を示すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LUZP1-cKOマウスの作成過程で得られたLUZP1-lacZマウスを用いて、X-gal染色により脳におけるLUZP1遺伝子の発現解析を行った。LUZP1遺伝子の発現は大脳皮質や海馬で発現していることを確認し、神経細胞のマーカーであるNeuN陽性の細胞がX-gal染色陽性であることを確認した。
これまでLUZP1-KOマウスは作成されていたが胎生致死になり、成体におけるLUZP1の機能解析は行われていなかったのでLUZP1-cKOマウスの作成を行った。大脳皮質や海馬の神経細胞で組換え酵素Creタンパク質を発現するEmx1-CreマウスとLUZP1-cKOマウスを交配し、大脳皮質や海馬で特異的にLUZP1を欠損させてLUZP1の機能解析を行った。まず大脳皮質や海馬の神経細胞においてLUZP1タンパク質が欠損していることを新たに作成したLUZP1抗体により確認を行った。また行動学実験によりLUZP1-cKOマウスが自閉症様行動を示すのかどうかを調べ、LUZP1-cKOマウスはオープンフィールドテストにおいて不安様行動を示した。
これまでにLUZP1タンパク質はMyosin-2bと結合することや、海馬神経細胞においてLUZP1の発現を低下させると膜表面に発現するNMDAレセプタの量に影響を与えることを見出していた。しかしLUZP1の神経細胞における機能をしる上では不十分であった。生化学的にLUZP1の解析を行ったところ、LUZP1タンパク質がNMDAレセプタの機能に関与するタンパク質と結合することを見出し、神経細胞におけるLUZP1の機能を解明する緒を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
自閉症のモデルマウスであるNeuroligin3(R451C)マウスとLUZP1-lacZマウスを掛け合わせ、大脳皮質におけるLUZP1遺伝子の発現変化を解析し、自閉症とLUZP1遺伝子発現との関連性を明らかにする。
LUZP1の発現抑制によりNMDAレセプタ2Aの細胞膜表面への発現量の増加について、LUZP1とMyosin-2bとの関連に着目してLUZP1の変異分子を用いて解析を行う。特に初年度において、LUZP1タンパク質がNMDAレセプタの機能に関与するタンパク質と結合することを見出したことから、このタンパク質を中心にして機能解析を進める。
LUZP1-cKOマウスにおいて不安様行動が観察されたことから、この表現形が生じる理由について詳細に解析を行っていく。またLUZP1の欠損による大脳皮質の神経回路形成異常等も考えられることから、小動物用超高磁場MRIを用いて拡散テンソル画像解析等により明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
申請通り研究を行ってきたが、LUZP1-cKOマウスを用いた外部との共同研究の為にマウスの輸送費(10万円/回)を想定していたが、予想よりもマウスの輸送回数が少なかった為に差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
順調に解析は進んでおり、それに伴い共同研究におけるマウスの国内輸送が増えるので、差額分はそれらに充てる予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Filamin A-interacting protein (FILIP) is a region-specific modulator of myosin 2b and controls spine morphology and NMDA receptor accumulation2014
Author(s)
H.Yagi, T.Nagano, Xie, M-J, H.Ikeda, K.Kuroda, M.Komada, T.Iguchi, RM.Tariqur, S.Morikubo, K.Noguchi, K.Murase, M.Okabe, M.Sato
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Journal Title
Sci. Rep.
Volume: 4
Pages: 6353, 1-13
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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