2014 Fiscal Year Research-status Report
組換えファージによる肺炎クラミジアを標的とした新規遺伝子導入システムの開発
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26670214
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
平井 到 琉球大学, 医学部, 教授 (00359994)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺炎クラミジア / 遺伝子導入 |
Outline of Annual Research Achievements |
偏性細胞内寄生性細菌であるChlamydophila pneumoniae(肺炎クラミジア)は市中肺炎の原因菌であり、動脈硬化などの慢性炎症性疾患やアルツハイマー病などとの関与も示唆されている。解析の進んでいる病原細菌では変異株の樹立や、形質導入、形質転換などの基本的な実験系や手法がよく整備されている。その一方、肺炎クラミジアの培養においては、培養真核細胞の存在が必須であり試験管での純培養は未だ成功していない。この為変異株樹立や遺伝子操作は非常に困難なものとなっている。そこで、本研究では、肺炎クラミジアに特異的に感染するバクテリオファージをベクターシステムとして用いる新規な肺炎クラミジアへの遺伝子導入系の確立を試み、確立された遺伝子導入系によりこれまで非常に困難とされている肺炎クラミジアへの遺伝学的解析に挑戦している。 現在、肺炎クラミジアに感染するファージとしてAR39株に溶原化しているφAR39ファージがある。このファージからファージゲノムをクローニングした。すでに公開されているファージの配列情報及び論文情報から想定されるオープンリーディングフレーム(ORF)を特定し、個別にpETベクターにクローニングし様々な条件において個別に発現誘導したところ、大腸菌宿主を溶菌させるORF product、不要化するORF productが観察された。このことから発現に用いられたORFは本来の遺伝子とは異なる可能性、いくつかのORFが共同して発現する必要性などが示唆された。φAR39が属すると考えられているミクロウイルス科ウイルスはウイルスゲノム全体を一本のmRNAとして転写・翻訳されるため、φAR39においてもウイルスゲノム全体を一本のmRNAとして転写・翻訳されるようにpETベクターにクローニングし発現誘導させたところ、いくつかのファージ由来タンパク質と考えられる発現が確認された。現在作製しているシャトルベクターとの併用によって遺伝子導入実験へ移行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GeneBankに収載されている遺伝情報から推定されるORFのアサインメントと関連ウイルスの論文情報から得たORFのアサインメントが異なっており、どのORFをどのように組み合わせて発現させるかという点に検討が必要とされた。また、各ORFの発現の確認についても十分な確認が行われる必要があった。シャトルベクターを開発する際にも、φAR39ファージゲノムの複製開始点の同定が必要とされているため、研究計画策定時に想定されていたタイムスケジュールからやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
φAR39ファージゲノムの複製開始点を複製関連蛋白質を用い決定し、複製開始点を含んだ改変φAR39ファージゲノムを用いたシャトルベクターを作製する。作製したシャトルベクターとこれまでに作製したφAR39の各種遺伝子を発現する大腸菌とを組み合わせて組み換えクラミジアファージを作製する。作製されたクラミジアファージを肺炎クラミジアTW183株に感染させて、遺伝子導入が行われるか否かについて検討する。 以上の検討の結果、組換えファージによる遺伝子導入系が有効に働かない場合にはφAR39ファージゲノムを用いた発現プラスミドの作製を行う。
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Causes of Carryover |
研究経費は計画的に使用したが1666円の残金が生じることが推定された。挑戦的萌芽研究は基金化されているため次年度有効に利用することとしそのまま残金とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の残金は物品費として使用する。
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