2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26670254
|
Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
河田 晋一 東京医科大学, 医学部, 助手 (00527955)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ホルムアルデヒド(FA ) / Thiel法 / プリザーブ法 / SSS法 |
Outline of Annual Research Achievements |
正常解剖実習における解剖体の防腐処置には一般的にホルムアルデヒド(FA)が用いられている。平成20年3月より特定化学物質障害予防規則が改正され、FA管理濃度指針値の強化(0.1ppm以下)により、正常解剖実習におけるFA暴露低減が必須となった。各大学では全体換気システムの導入や光触媒、また最近では局所排気システムによる低減対策も行われている。しかし、各大学での実習室や作業環境の構造が異なるため、FA濃度が0.1ppm以下に達している大学は限られている。本研究の目的は、解剖体への固定液の組成・注入法の確立と、保存期間中に解剖体に蓄積するFAを低減させることで、作業環境測定での全体的なFA管理濃度を低減し、解剖学における教育環境および作業環境をさらに改善することである。 平成26年度は、解剖体への固定液の組成について、一般的なホルマリン法の他に3種類の固定液を作製し、その固定効果と防腐効果について比較検討した。無作為に選定したご遺体を、一般的なホルマリン法(FAの濃度が3.7%)、アルコールを主成分とするThiel法(FAの濃度が1.8%)、親水性高分子モノマーであるピロリドンを主成分とするプリザーブ法(FAの濃度が0%)、飽和食塩水を主成分とするSSS(Saturated salt solution)法(FAの濃度が0.75%)により注入固定し、それらの固定効果と防腐効果を、肉眼的解剖による観察、細菌および真菌培養試験によって比較検討した。ホルマリン法、プリザーブ法、SSS法、Thiel法の順に解剖体関節部の可動域が広くなることが明らかとなった。また、SSS法、Thiel法では筋・内臓自体の柔らかさも認められた。一方、各々の固定法で解剖の経過に伴う解剖体の肉眼的変化が認められた。その原因として、固定液中の水分の蒸散とともに主成分の経時的変化が考えられた。解剖体の固定前後および保存期間中の経時的な体重変化についても今後の研究課題と考えられた
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、解剖実習室におけるホルムアルデヒド(FA)の管理濃度低減を目的としている。FA濃度を低減させる為に様々な固定液による注入を試みた。同時にそれらの固定法による解剖体の固定・防腐効果を比較した。平成26年度は、サージカルトレーニングにおける解剖体の有用性を中心に、一定の成果が得られたが、解剖体の長期保存が求められる解剖学教育および研究における解剖体の有用性については、さらに検討が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
様々な固定液により注入された解剖体から発生するFA濃度の経時的な測定を行う。注入前と注入後の解剖体の体重を測定し、解剖体の保存期間中における経時的変化との関連を検討する。また、筋・肺・肝臓・消化管・腎臓・脳の組織標本を作製し、固定効果を評価する。以上の結果により、解剖体に対する固定法を微細調整することで作業環境測定での全体的なFA管理濃度を低減し、解剖学における教育環境および作業環境をさらに改善する。
|
Causes of Carryover |
解剖体モデル作製を中心に、当初予定した研究計画の順序を変更したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
解剖学における教育環境および作業環境をさらに改善するための解剖体モデルの作製に努め、FA濃度の経時的な測定を行う。また、注入前と注入後の解剖体の体重を測定し、解剖体の保存期間中における経時的変化との関連を検討する予定である。
|
Research Products
(4 results)
-
[Journal Article] Saturated salt solution method: a useful cadaver embalming for surgical skills training.2014
Author(s)
Hayashi S, Homma H, Naito M, Oda J, Nishiyama T, Kawamoto A, Kawata S, Sato N, Fukuhara T, Taguchi H, Mashiko K, Azuhata T, Ito M, Kawai K, Suzuki T, Nishizawa Y, Araki J, Matsuno N, Shirai T, Qu N, Hatayama N, Hirai S, Fukui H, Ohseto K, Yukioka T, Itoh M.
-
Journal Title
Medicine
Volume: 93
Pages: e196
DOI
Peer Reviewed
-
-
-