2014 Fiscal Year Research-status Report
タナトフォリック骨異形成症の胎児脳より樹立した神経幹細胞を用いた分子病態解明
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26670513
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
伊東 恭子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80243301)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 先天異常学 / 神経幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
タナトフォリック骨異形成症(以下TD)における脳形成異常の分子病態解明のため、胎児脳から樹立した神経幹細胞(以下NSCs)の培養を開始した。正常胎児由来のNSCsとTD由来(FGFR3遺伝子のK650E点変異を有するラインとR248C点変異を有するラインの2種類を保有している)のNSCsを用意し、細胞増殖と細胞移動能を比較することで、FGFR3変異による神経幹細胞の基本性質の違いを検討した結果、細胞増殖・細胞移動能ともにTD由来と正常由来の細胞では再現性のある差異を認めた。 正常由来のNSCsに点変異を持つFGFR3遺伝子を導入することでTD様病態を獲得するか否か、一方、点変異FGFR3を有するNSCsにドミナントネガティブ変異体を導入することで、またはshRNAを用いてノックダウン処理することで、TD様病態が正常化するかどうかの検討を可能にすべく、これら発現改変用ベクターの構築に着手した。第一に、インテグラーゼによるゲノム挿入法で試みたが、NSCsへの導入効率が低く、実用的でないことが判明した。問題を解決すべく、全てのベクターをレンチウイルスベクターに移し替える段階に至った。 NSCsからミニブレインを構築する方法の確立を目指して、培養液の組成の検討と、三次元培養器具などの検討を行った。ミニブレイン構造体の評価方法として薄切後の各種細胞種マーカー蛋白を対象とした免疫組織染色法にて検討した。予備的観察ではあるが、スピナーフラスコを用いる方法と、ロータリーベセルを用いる方法では産物の構造には大差はないと思われるが、長期間維持培養するなか、前者では支持組織として使用しているマトリゲルの回転子による物理的破壊が目立ち、継続培養が難しい場面も経験した。また、多検体を同時に処理するための設備環境をさらに整備する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一時期、若干ではあるがマンパワーが不足した。そのため、初年度の計画がやや遅れている。 NSCs培養を開始した当初は、Sphereの浮遊状態が安定せず苦労したが、低接着フラスコの使用により安定化が図れた。Sphereを形成させて増殖維持させるという細胞の性質上、細胞増殖や細胞移動能といった細胞の基本性質を解析する上でも、通常の手法が適用できないことが多いが、試行錯誤して現実的で合理的な手法を適用し、結果を導き出している。 使用可能なNSCsラインは、正常由来もTD由来もともに個体数が限られるため、分子生物学的手法を用いて人為的にFGFR3遺伝子発現改変を施してサブラインを樹立することで、遺伝子変異の有無や遺伝子発現量と病態との関連が科学的に証明できると考えられる。この考えに沿って遺伝子発現改変のためのツール作製を進めた。今年度内に野生型および点変異FGFR3のコーディング領域全長のcDNAクローニングを終え、ドミナントネガティブ変異体のベクター構築にまで至った。インテグラーゼによるゲノム挿入法がNSCsに適用できなかったことは誤算であったが、ウイルスベクターによる導入で問題を解決すべく、早急にウイルス実験計画を学内遺伝子組換え実験委員会に申請・承認を得て、現在進行形で解決に向け取り組んでいる。 ヒト由来NSCsの倍加速度が非常に遅いことを考慮して、27年度に予定していたミニブレイン構築の作業を前倒しするかたちで条件検討を開始したことは評価されるべき点である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度前期にレンチウイルスベクターによるFGFR3遺伝子改変NSCsサブラインを複数作製し、NSCsの諸性質・シグナル伝達変動・遺伝子発現プロファイルなどの情報を取得する。初年度より踏み込んだ解析とくに大脳の前後軸に沿った領域化メカニズムにも検討を加えるために、FGFリガンド種類とFGFR3変異の関係を明らかにし、また、部位特異的マーカー遺伝子のレポーターなどを駆使した解析に取り組む。 NSCs培養系は初年度と同様に、二次元、三次元の両者を併用するが、特に三次元におけるTD様病態モデル樹立のための検討に重きをおく。多検体を同時に処理するための設備環境をさらに整備しつつ、マトリゲルに替わる他の支持体の適用も考慮する。
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Causes of Carryover |
一時期、若干ではあるがマンパワーが不足した。そのために初年度の計画が若干遅れたことがその理由として考えられる。しかしながら、ヒト由来NSCsの倍加速度が非常に遅いことを考慮して、27年度に予定していたミニブレイン構築の作業を前倒しするかたちで条件検討を開始したことは評価されるべき点である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度前期にレンチウイルスベクターによるFGFR3遺伝子改変NSCsサブラインを複数作製し、NSCsの諸性質・シグナル伝達変動・遺伝子発現プロファイルなどの情報を取得する。さらに踏み込んだ解析とくに大脳の前後軸に沿った領域化メカニズムにも検討を加えるために、FGFリガンド種類とFGFR3変異の関係を明らかにし、また、部位特異的マーカー遺伝子のレポーターなどを駆使した解析に取り組む。 NSCs培養系は次年度も同様に、二次元、三次元の両者を併用するが、特に三次元におけるTD様病態モデル樹立のための検討に重きをおく。多検体を同時に処理するための設備環境をさらに整備しつつ、マトリゲルに替わる他の支持体の適用も考慮する。
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