2014 Fiscal Year Research-status Report
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26670593
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福島 浩平 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20271900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 直人 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60291267)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 塩化ナトリウム / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大腸全摘術後のレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の賦活化と回腸ナトリウム環境の変化が、回腸嚢炎の発症・難治化の原因であるという仮説を証明するために、26年度はマウスを用いたin vivo実験によって、アルドステロン上昇による管腔内Na濃度の低下により腸内細菌叢がどう変化するかを検討する予定であったが、in vitroのシステムにおいて検討を行った。また、アルドステロン持続投与における上皮細胞遺伝子発現変化を、マイクロアレイを用いて網羅的に解析した。 NaCl濃度の調節可能なLB培地を用いて、0、35、70、140mMと通常のLB培地で用いられる171mMにおいて、糞便より腸内細菌菌液を調整し、37度で振とう培養した。細菌の増殖を600nmの吸光度測定により経時的に検討した。培養開始3および6時間では各群間で差を認めないが、24時間においてNaCl濃度0、35mMでは有意に増殖が不良であった。DNAを抽出し培養後の菌構成について検討したが現時点では明らかな差異を見出せていない。 ラットアルドステロン持続投与モデル(80mg/100g/day、4週皮下持続投与)の腸管上皮遺伝子発現を改めて解析したところ、小腸上皮ではアルドステロンによる遺伝子誘導が23遺伝子、抑制が35遺伝子に認められたのに対し大腸上皮では誘導が200遺伝子、抑制が23遺伝子と、大腸上皮において多数の遺伝子が誘導された。これらの中に、Regやdefensinなどの生体防御関連遺伝子の発現変化は、少なくともマイクロアレイでは抽出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成26年度の研究の達成度についてみると、進行状況は芳しくない。当初の予定では、アルドステロン上昇による管腔内Na濃度の低下により腸内細菌叢がどう変化するか、を中心に検討する予定であった。そのために、マウスを用いて、無処置群、皮下埋め込み浸透圧ポンプを用いたアルドステロン持続投与群、Dextran Sulfate Sodium(DSS)投与群、アルドステロン持続投与+DSS投与群の4群を作成し検討する予定であった。しかし、これらのin vivoモデルを十分検討できなかった。 その理由として挙げられるのは、予定していた大学院生が事情により退学してしまったという研究室環境の変化が影響している。その結果、比較的手間のかかるin vivo実験が実施困難な状況に陥ってしまった。そこで、当初の研究目的を達成するために、in vivoの系に替わるin vitroの系を模索する必要があり、かかる観点から腸内細菌培養実験を施行した。 一方、ナトリウム環境の変化に対応するHost側の変化であるが、アルドステロン持続皮下中モデルのラットより採取した小腸および大腸上皮mRNAを解析した。この検討は当初平成27年度に実施する予定であったが一部前倒しにより実施した。解析はまだ途中であるが、マイクロアレイを用いた網羅的解析を行っている。 全体としてみると、研究室のマンパワー低下が影響し平成26年度の60-70%程度の達成状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、マウスin vivoモデルを用いて、無処置群、皮下埋め込み浸透圧ポンプを用いたアルドステロン持続投与群、Dextran Sulfate Sodium(DSS)投与群、アルドステロン持続投与+DSS投与群の4群を設定し、至適ナトリウム環境達成のための条件確認、アルドステロン持続投与+DSS投与群における条件設定、4群間の小腸炎・大腸炎の評価、DNAを用いた生菌腸内細菌叢の解析、小腸・大腸上皮における抗菌タンパクmRNAの発現、消化管および脾リンパ球におけるTh17細胞の解析(フローサイトメトリーとmRNA発現の検討)を行う予定であった。平成27年度は、研究員確保により当初のin vitroモデルの実現を図るとともに、それが達成できない場合もあえて想定しin vitroにおける検討もあわせて行う。このことは、研究の効率化を図るという観点からは、むしろプラスに働くことが十分予想される。 すなわち、腸内環境に類似した嫌気培養システムを検討するとともに、腸内細菌に対するNaCl濃度の影響を、当初の予定通り細菌DNAを用いた解析法(Terminal restriction fragment length polymorphism (T-RFLP)による解析)により検討する。その際には、培養液の組成や調整法を十分に検討する必要が生じるが、Mollyらの方法(alrabinogalactan, pectin, xylan, starch, glucose, yeast extract, proteose pepton, mucin, cysteine, 10種のtrace element, 8種のvitamin)を基本とし、脱気冷却による酸素分圧の低下を図るなどの工夫を行う。
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Causes of Carryover |
大学院生の中途退学により、研究室のマンパワーが低下し、手間のかかるin vitro実験を実施することが困難となり、この分の研究費の使用がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究要員の確保に努め、平成26年度に実施できなかったin vitro実験を実施するとともに、それが達成できない場合もあえて想定しin vitroにおける検討もあわせて行う。その際には、細菌培養に必要な様々な試薬の購入に当てる予定である。
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