2014 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍幹細胞増殖制御に基づいた横紋筋肉腫治療戦略の開発
Project/Area Number |
26670766
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
黒田 達夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60170130)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檜山 英三 広島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00218744)
滝田 順子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (00359621)
池田 均 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10326928)
渕本 康史 慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (40219077)
森川 康英 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90124958)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 小児腫瘍学 / 小児がん / 横紋筋肉腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の今年度は、臨床研究の基盤構築と、基礎研究のための基礎データ収集が行われた。 本研究が連動している横紋筋肉腫の臨床研究は、厚生労働省革新的がん医療実用化研究事業による委託経費からの支出も合わせて進められた。腫瘍の特性と遺伝子型 (genotype)、組織型 (phenotype) の関連に関する今年度の解析では、キメラ遺伝子が胎児型で1例も検出されなかったのに対して、胞巣型・混合型ではPAX3-FKHRあるいはPAX7-FKHRが76%の症例で陽性で、progression free survivalはキメラ遺伝子陰性群の76.8±4.4%に対して陽性群では46.0±7.3 %と有意に陰性群で低かった。キメラ遺伝子陰性の胞巣型症例の生存曲線はprogression free survival 75.0±12.5%で、胎児型の76.3±4.9%とほぼ完全に重なった。これに基づき腫瘍組織の遺伝子型によりリスク分類する手順を確定し、遺伝子型、組織型の各分類が併記できるようにした。 基礎研究では、横紋筋肉腫細胞株(Rh30, KYM-1, RMS-YM, RD)についてFACSにより候補腫瘍幹細胞マーカー(CD44, CD44v, CD133)の発現を評価した。CD44は全ての腫瘍株で発現が確認されたが、CD44vはいずれの横紋筋肉腫細胞株でも発現はみられなかった。CD133はRh30, KYM-1, RMS-YM株において表出率は2%以下であったがRD株においては25%が陽性で、CD133陽性細胞は抗癌剤(CDDP, VCR, Act-D)抵抗性ならびに免疫不全マウスにおいて高い造腫瘍能を示した。これらは横紋筋肉腫細胞の腫瘍幹細胞を検討する基礎データとなる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は先行する横紋筋肉腫臨床試験における遺伝子型と組織型の予後解析が完了し、新たな臨床試験にむけて解析結果に基づくリスク分類の改訂、新たな病理組織診断手順の完成など、臨床試験基の基盤構築も完了した。加えて低リスク群、中間リスク群の臨床試験プロトコールも策定が完了したが、高リスク群プロトコールについてはプロトコールで選択された治療計画の一部に研究遂行上の問題が指摘され、修正を要する状況である。この結果、リスク群を限定して次年度に、臨床研究が開始できる見通しであり、臨床試験に関してはほぼ予定通りに研究計画が達成された。 しかしながら今年度は臨床試験が開始されていないため、新規臨床検体は得られておらず、腫瘍組織における幹細胞マーカーの発現、先端的ゲノミクスを用いたゲノム解析などの基礎的解析や検討はまだ行われていない。 In vitroの研究として、横紋筋肉腫細胞株において腫瘍幹細胞マーカーの発現が検討された。CD133はじめ一部のマーカー抗原の発現と化学療法抵抗性、造腫瘍能との関連も確認された。これらは今後、腫瘍幹細胞を検討する上で重要な基礎データを考えられ、既存の培養株を用いた研究に関してはほぼ計画通りに研究が達成できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は高リスク群横紋筋肉腫に対するプロトコール策定など、今年度達成できなかった部分の臨床試験計画も策定を完了し、低リスク群、高リスク群と合わせて、遺伝子型によるリスク分類を取り入れた横紋筋肉腫に対する新規臨床試験の全面的施行を目指す。臨床試験は全例で完全な治療完遂にまだ数年、さらに臨床経過の観察に数年を要するため、次年度の時点では多くの症例が未だ治療途中と考えられるが、可能であれば新リスク分類、新規治療の有用性について中間解析を行う。 また臨床試験の開始により、新たなプロトコールで均てん化された治療を受けた症例の腫瘍組織などの臨床検体が集積し始めるものと思われる。今年度開始できなかった腫瘍組織における腫瘍幹細胞マーカー発現の検討、次世代高速シーケンサーを用いたCSCとその下層の分化したがん細胞におけるエクソンキャプチャー、エピゲノムの網羅的解析やCSCの成立・維持を制御する特異的分子の検索など先端的ゲノミクス解析、薬剤感受性の検討などを開始し、臨床検体の解析を随時進める。 既存の細胞株やTERT遺伝子導入がん化幹細胞株を用いた研究では、マーカー抗原遺伝子発現解析や増殖能の評価を進める。これらの結果を臨床試験データと付き合わせて横紋筋肉腫に対する新規治療の可能性を検討する。
|
Causes of Carryover |
今年度は臨床試験基盤の整備が行われ、プロトコールがほぼ完成したが、学会の承認などの手続きにはまだ若干の時間を要し、実際の臨床試験の開始は次年度へ持ち越された。このため、臨床検体はまだ得られておらず、これに関わる試薬、物品などの費用は使用されなかった。これは次年度以降に使用する予定である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
臨床試験が開始された場合、臨床検体の保管および解析に用いる試薬、分子生物学的リスク分類のために用いられる試薬や物品の購入費用などに充当される予定である。
|
Research Products
(5 results)
-
-
-
[Journal Article] 小児がん診断後の二次がん発症に関する疫学研究 15病院における後ろ向きコホート(Secondary cancers after cancer diagnosis in childhood: A hospital-based retrospective cohort study in Japan)2014
Author(s)
石田 也寸志(愛媛県立中央病院 小児医療センター), 邱 冬梅, 前田 美穂, 藤本 純一郎, 気賀沢 寿人, 小林 良二, 佐藤 真穂, 岡村 純, 吉永 信治, 力石 健, 七野 浩之, 清谷 知賀子, 工藤 寿子, 浅見 恵子, 堀 浩樹, 川口 浩史, 稲田 浩子, 足立 壮一, 真部 淳, 黒田 達夫
-
Journal Title
日本小児血液・がん学会雑誌
Volume: 51
Pages: 261
Peer Reviewed
-
[Journal Article] 横紋筋肉腫治療後26年で発症した放射線誘発性軟骨肉腫の1例2014
Author(s)
宇高 徹(慶応義塾大学 医学部整形外科), 須佐 美知郎, 中山 ロバート, 渡部 逸央, 堀内 圭輔, 星野 健, 黒田 達夫, 佐々木 文, 向井 万起男, 戸山 芳昭, 森岡 秀夫
-
Journal Title
臨床整形外科
Volume: 49
Pages: 723-728
Peer Reviewed
-