2014 Fiscal Year Research-status Report
性同一性障害当事者の性別移行を促進する生活支援プログラムの開発
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26671000
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
古谷 ミチヨ 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, その他 (70701845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中塚 幹也 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (40273990)
川村 千恵子 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 教授 (20281272)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 性同一性障害 / MTF / 望む性での生活経験 |
Outline of Annual Research Achievements |
性同一性障害当事者のうち、MTF(身体的特性は男性であるが性自認は女性)当事者のリアル・ライフ・エクスペリエンス-望む性での生活経験-(以下RLE)について面接調査を実施し、続いて質問紙調査を開始した。 性同一性障害には主にMTFとFTM(身体的特性は女性であるが性自認は男性)の二つのタイプがあり、それぞれに異なるRLEが必要となる。ホルモン投与によって外見上の適応が比較的速やかに進むFTMに対し、MTFでは当事者特有のより細やかで持続的な生活適応上の課題達成に取り組む必要があり、それに伴う心身の負担が生じている。また、MTFでは性別違和感を自覚する時期に幅があると報告されており、生来の男性ホルモンの影響を受けて明白な男性的外観を有した後に治療を開始した当事者では、個人差があるもののホルモン投与による外観の女性化に限界があり、FTM以上に多岐にわたるストレスを抱えていると考えられる。以上の理由から本研究では調査対象をMTFに限定し、MTF当事者のRLE支援プログラムの開発を目指すこことした。質的研究では、女性パートナーと結婚経験があり子どもを持つMTF当事者を対象に、結婚前から現在までのRLEについて半構造化面接を実施し、逐語データを作成した。量的研究では、MTF当事者の望む性の表現、カミングアウトや対人関係等のRLEについて、岡山大学ジェンダークリニック受診者および全国に支部を有する性同一性障害当事者会参加者を対象に質問紙調査を開始した。質問紙作成に当たっては、質的研究で把握した状況を踏まえるとともにMTF当事者からの聴き取りを行い、より具体的で現実的な表現で内容を提示した。さらに、調査前には当事者に試行を依頼して内容や表現の妥当性について意見を受け、反映させた後に調査を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質的研究はやや遅れているが量的研究は当初の計画よりも進んでいるため、全体的には順調な進捗である。質的研究における面接調査では協力者が速やかに得られ逐語データ作成までは順調に進行したが、研究対象をMTF当事者としたことにより量的調査の事例数確保の期間を延長する必要性が生じ、質問紙調査の開始を今年度に繰り上げたため、逐語データの分析に着手することが困難であった。一方、量的研究ではMTF当事者の協力を得て質問紙を作成し、岡山大学ジェンダークリニックおよび性同一性障害当事者会から研究への理解と支持を受けて調査を開始し、進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
質的研究は、逐語データを解析して女性パートナーと結婚して子どもを持つMTF当事者のRLEについて特徴的な要素を明らかにする。現在までの達成度の項で述べたように、当初は来年度に予定していた質問紙調査を今年度から開始したことにより逐語データの作成に止まり、分析以降の作業を次年度に持ち越すこととなった。量的研究は、今年度に引き続き岡山大学ジェンダークリニック受診者と当事者会参加者を対象に質問紙調査を進め、調査事例数の追加を図る。その後はデータを集計してMTF当事者のRLEの解析に着手する。
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Causes of Carryover |
本年度内に量的研究にも着手したため、予定していた質的研究成果のまとめと報告に使用予定であった額を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
質的研究成果をまとめる上で必要となる図書や文献の購入、打ち合わせ、成果報告に伴う経費に充てる。また、量的研究における質問紙調査実施に伴う旅費や調査票の返送費、データ分析に必要な統計ソフトやパソコン、周辺機器、図書や文献の購入、打ち合わせ等に伴う諸費用に使用する。
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