2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26700001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 彰星 東京大学, 総合文化研究科, 講師 (20600117)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 数値計算 / 計算量理論 / 実数表現 / 精度保証 / 微分方程式 / 函数解析 / ワイラオホ次数 |
Outline of Annual Research Achievements |
前回報告書で今年度の課題としていた、函数解析に用いる空間の計算論的表現についての進展を、研究集会Continuity, Computability, Constructivity―From Logic to Algorithms (CCC)(独コッヘル、九月)で発表した。平面上の集合としての曲線とそれを媒介変数表示する函数の計算量についての結果を、12th International Conference on Computability and Complexity in Analysis (CCA)(東京、七月)で発表した。これらは計算論の議論を、単なる実函数など従来の単純な対象から、より一般の対象に広げるものであり、実際的な問題での計算効率を論ずるために役立てることを企図した研究である。また前年度までに得ていた解析函数とジュヴレ階層の函数についての分析は今年度Journal of Complexity誌に掲載された。
これら個々の結果に加えて、ワイラオホ帰着などの手法を用いて実数計算における計算量を議論する枠組とそれに関する最近の展開を隣接分野に向けて紹介する講演を16th International Workshop on Logic and Computational Complexity (LCC)(京都、七月)、18th Korea-Japan Joint Workshop on Algorithms and Computation (WAAC)(韓国仁川、八月)などで行った。
第12回「解析学における計算可能性と計算量」国際会議(CCA)を計画通り七月に東京で開催した。これは従来から定期的に開催されてきたものでもあるが、今回は通常の会議本体に先立って、特に本研究に関わりの深いテーマとして、実際的な数値計算の計算量に重点を置いたワークショップ「German-Japanese Workshop on Theory and Practice of Real Computation」を開催した。六十名の参加があり、活溌な議論が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より計画していた理論・応用両面の課題のうち幾つかにおいて、上述のように、成果を得て論文誌や研究集会で発表したほか、更なる統合・深化に向けた端緒も得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時に計画していた課題のうち、上述の今年度までに達成したもの以外の項目に取組む。特に、これまでの研究(本計画による研究、及び他研究者による最近の研究)で、或る種の函数空間や、測度(確率分布)、曲線など、実際的問題を扱うのに必要な数学的対象における計算量諸概念の性質が徐々にわかってきたので、その応用として離散・連続力学系や確率的現象などの計算論的分析を進めたい。
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Causes of Carryover |
国際会議CCA開催のために計上していた費用について、周辺研究分野への展開を進めた結果、計算限界解明プロジェクトとの共催にするなど、他資金も得られることとなり、招聘等にかかる支出が当初の想定よりも減った。また、年度内に得た成果のうち、次年度中に開催される国際会議で発表予定のもの一件について、まだ発表のための費用が発生していない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度中に得た成果を発表する費用として使用する。また、CCA開催の費用は減ったが、そこでの交流から生じつつある共同研究の萌芽などもあるので、その交流継続を含め研究を加速させるために有効に使用する。特に今年度から、大学院生が加わって研究室活動を始めたので、協力して研究を推進するために必要な物品費や旅費が増えることが見込まれるため、これに充てる。
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