2015 Fiscal Year Annual Research Report
X線可視化計測と超並列数値流体計算の融合による鳥呼吸器内流体制御機構の統合的解析
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26702012
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中村 匡徳 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20448046)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 鳥類 / 呼吸器 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥の呼吸器内では,分岐部分において構造的な弁無しに,空気が特定の方向にのみ流れる.この機構として吸入空力弁がある.吸入空力弁は,一次気管支分岐上流にある狭窄によって,吸入された空気が加速され,慣性力によって流れの剥離が生じ,主気管支から分岐する気道には流れず,主気管支に特異的に誘導されるというものである.しかしながら,流入した空気の内,どの程度が主気管支側に誘導されるのかということについて定量的なデータはなく,吸入空力弁の効果は不明である.そこで,本年度はウズラを題材として,昨年度構築した鳥呼吸器内気流のマルチスケールモデルを用いて吸入空力弁効果の定量化を行った. 狭窄の比率を狭窄率とすれば,安楽死させた状態の狭窄率は22%であった.この狭窄率を0, 30, 50, 70, 90%にそれぞれ変化させ,解析を行った.分岐部分において主気管支方向に誘導された気流の割合は順に,0.45, 0.46, 0.49, 0.54, 0.59, 0.80であった.このことから,一次気管支分岐上流にある狭窄の比率が増加することにより,吸入空力弁効果は指数関数的に増加することがわかった.このことは,狭窄率が多少増加するだけで,流量分配率が大きく変化することを示している.また,一呼吸周期中において,側気管支部が一方向流れになっている割合は,順に,0.64, 0.64, 0.76, 0.98, 0.99, 0.99であった.この結果から,狭窄率が増加すると,おおよそ一方向流れになることがわかった. 気管支周囲の平滑筋により狭窄率は10%程度変化することが知られている.これに鑑みれば,運動中などの酸素欠乏状態では,狭窄率を変化させることでより効率的に主気管支側へと吸入した空気を輸送することで,側気管支部にて一方向流れを形成し,効率よくガス交換を行っているのではないかと推察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目までに予定していた鳥呼吸器内流れのX線可視化および鳥呼吸器内流れのボクセル型GPU数値流体解析までは終了した。現時点で行えなかったのは、気嚢動的変形挙動のX線可視化であり、これは実験上、試みたが、解像度等の限界から困難であったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、鳥呼吸器の多次元モデルを作製し、吸入空力弁効果の定量化に成功した。本年度はその手法を用いて、ウズラの個体間誤差を調べるとともに、ニワトリ等との種における差について調べる。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね計画通りに進んでおり、問題はない。昨年度は、本研究に関する国際会議がなkったために、旅費等の執行を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、研究成果の国外発信を目的とした使用を考えている。また、計算機についても古くなった部分があるので、一部更新を行う。
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Research Products
(1 results)