2014 Fiscal Year Annual Research Report
うつ徴候および軽度記憶障害を有する高齢者に対する非薬物介入の効果検証
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26702033
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
牧迫 飛雄馬 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 生活機能賦活研究部, 室長 (70510303)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知科学 / 脳・神経 / 健康科学 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、軽度記憶低下およびうつ徴候の高齢者を想定して、運動以外の非薬物による効果的な介入手段を選定する作業を実施した。介入方法の選定のための調査として、地域在住の高齢者が興味を持って、継続的に実施できる可能性のある活動を質問紙によって模索した。具体的には、地域在住の高齢者202名(平均76.3歳)を対象として、日常的に脳の健康のために取組んでいる活動の有無や日常でのさまざまな活動に関する興味の有無などを調査した。その結果、97名(48.0%)が脳の健康のために取組んでいる活動があると回答し、取組んでいないと回答した者と比較して、物語記憶課題(即時再認)および情報処理課題の成績が有意に良好であり(p<0.05)、単語記憶課題(遅延再生)の成績が良好な傾向であった(p<0.10)。さまざまな活動の実施状況や興味の有無を調べたところ、園芸(ガーデニング)の実施割合が最も多く(113名)、現在は取り組んでいないが今後に取り組んでみたいと回答した者も40名(19.9%)いた。園芸(ガーデニング)に取り組んでいる者と取り組んでいない者で比較すると、年齢や性別に差はないものの、取り組んでいる者では注意機能の成績が有意に良好で(p<0.01)、全般的な認知機能(Mini-Mental State Examination)も良好な傾向であった(p<0.10)。また、女性においては園芸(ガーデニング)に取り組んでいる者で、うつ徴候を調べる指標の値が低い傾向であった(p<0.10)。 さらに、健忘型MCIに該当した地域高齢者女性56名(平均年齢72.0歳)を対象に認知課題(言語流暢性課題)中の脳の血流を測定して、日常的に園芸(ガーデニング)を実施している者(38名)と実施していない者(18名)とで比較した。その結果、右側前頭葉領域における血流に有意差が認められ、日常的に園芸(ガーデニング)を実施している者で血流(⊿酸化ヘモグロビン濃度)が有意に増大していた(p<0.05)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度以降に実施を計画している効果検証のための介入研究における非薬物による介入手段の選定が完了し、具体的な介入実施の計画を進めている。また、介入のための取り込み基準を満たす対象者の選定を開始しており、軽度な記憶低下を認め、うつ徴候を有する高齢者のスクリーニング検査も開始している。 これらの状況より、本研究課題は概ね計画通りに進展できており、引き続き予定された計画に準じて進行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の成果も踏まえて、平成27年度は運動および園芸(ガーデニング)・農業活動を介入手段として、認知機能向上やうつ症状悪化の抑制効果を検証するための介入研究を計画する。平成27年度の研究計画では、うつ徴候および軽度記憶障害のリスクを有する高齢者のスクリーニングを中心に進め、介入のためのプログラムを作成し、介入研究を開始する。平成27年度中に一次スクリーニングを終了し、潜在的な介入対象者の選定を完了する計画である。これまでの同コホートでの追跡調査などにおける参加率を考慮すると、65歳以上の地域高齢者4,000名程度のスクリーニング調査を計画している。介入の対象は、うつ徴候および軽度記憶障害を有する高齢者とし、具体的な取り込み基準はGeriatric Depression Scale(GDS)6点以上、かつ記憶機能検査において年齢調整平均値から1標準偏差を下回る者とする。なお、既に認知症やうつ病の診断のある者、認知症やうつ病に対する薬物治療を行っている者は除外とする。 効果を判定するための介入の必要対象者数を算出すると、GDSの2点を有意な改善と想定し、同地域コホートにおける標準偏差(2.5点)を基に有意水準1%で検出力80%とした場合に、1群ごとにサンプルサイズは約40名となり、1年間の脱落を考慮して1群を50名とする。研究プロトコルについては、事前に臨床試験としての登録(UMIN)を計画しており、同時に国際ジャーナルへStudy protocolとして投稿する。
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Causes of Carryover |
研究成果を発表する論文の掲載費などが年度をまたいで必要となるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に論文掲載費、学会参加費にて使用する。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Cognitive functioning and walking speed in older adults as predictors of limitations in self-reported instrumental activity of daily living: prospective findings from the Obu Study of Health Promotion for the Elderly.2015
Author(s)
Makizako H, Shimada H, Doi T, Tsutsumimoto K, Lee S, Hotta R, Nakakubo S, Harada K, Lee S, Bae S, Harada K, Suzuki T.
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Journal Title
Int J Environ Res Public Health
Volume: 12(3)
Pages: 3002-13
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Physical frailty predicts incident depressive symptoms in elderly people: prospective findings from the Obu Study of Health Promotion for the Elderly.2015
Author(s)
Makizako H, Shimada H, Doi T, Yoshida D, Anan Y, Tsutsumimoto K, Uemura K, Liu-Ambrose T, Park H, Lee S, Suzuki T.
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Journal Title
J Am Med Dir Assoc.
Volume: 16(3)
Pages: 194-9
DOI
Peer Reviewed
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