2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26709005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
米谷 玲皇 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90466780)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 波長計測 / プラズモニクス / ナノメカニカル振動子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光通信大容量化への貢献を狙い、プラズモニック構造を複合的に活用した波長計測ナノメカニカル素子を創出することを目的としている。 今年度は、振動子に組み込むプラズモニック構造体を吸光特性の観点から最適化した。結果として、SiO2/Au/SiO2からなるサンドイッチ型ホールアレイ構造が、1.5 μm帯の光波長の高分解能計測に有効であることを見出し、これを有する光ナノメカニカル振動子を作製,評価した。波長計測特性の評価は、光照射に対し最も大きな共振周波数シフトを示した20.12MHzの2次の振動モードを用いて行った。評価の結果、波長範囲1550-1562 nmにおける波長分解能は0.92pmであり、市販の波長計測器と比較し、高い波長分解能が得られていることがわかった。この結果は、サンドイッチ型ホールアレイ構造を組み込んだ振動子が、波長計測のための光メカニカル構造体として有効であることを示している。 また、光ナノメカニカル素子の精密な作製や高分解能波長計測のための重要な要素一つである振動子高Q値化を形状の観点から進めるために、その研究ツールである集束イオンビーム化学気相成長法(FIB-CVD)の精密化の研究を行った。FIB-CVDは、任意3次元ナノ構造を作製可能な技術であり、メカニカル構造作製,その研究にも有効な技術であるが、形成高さに応じで成長量が変化するという課題があった。本研究では、この成長量の形成高さ依存性を評価,モデル化し、上方成長量を均一化するシステムを構築,FIB描画装置に組み込むことで、その精密化を試みた。結果として、構造体の設計CADデータ単位層あたりの成長量標準偏差として約0.99nmを達成し、従来と比較し2.8倍の成長量均一化が可能であることがわかった。光ナノメカニカル振動子の作製,振動子形状の観点から振動子高Q値化の研究を加速させるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、昨年の知見をベースに、吸光特性の観点からナノメカニカル振動子に組み込むプラズモニック構造体の最適化をすすめ、SiO2/Au/SiO2からなるサンドイッチ型ホールアレイ構造が高分解能光波長計測に有効であることを見出すとともに、実際にサンドイッチ型ホールアレイ構造を組み込んだナノメカニカル振動子を試作した。また、その波長計測分解能は、市販の一般的な波長計測器の分解能を上回るものであった。さらに、今年度構築した上方成長量を均一化する機能を有する描画装置は、FIB-CVDによる精密な光ナノメカニカル構造形成を可能とするものであり、光ナノメカニカル素子の精密な作製や機械的共振の観点で光波長の高分解能計測に必須の高Q値振動子作製の研究を一層精力的にすすめる研究ツールとしての活用を予定している。このように、光ナノメカニカル構造体のプラズモニック構造体の機能性を最適化し高分解能での波長計測を実証したこと、そのさらなる高分解能化,素子作製のための作製技術を精密化したことから、本研究は、研究目的である超高分解能な光波長計測素子の実現に向け研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、今後、さらなる高分解能な波長計測を狙い研究を進める。具体的には、プラズモニック構造体が組み込まれた光ナノメカニカル振動子を高Q値化に関する研究を行い、機械的共振高性能化の観点からの波長計測高分解能化を目指す。上記したように、現在のところ光学的観点からはSiO2/Au/SiO2からなるサンドイッチ型ホールアレイ構造が高分解能光波長計測に有効であると考えており、当初はこれを組み込んだ光ナノメカニカル振動子を対象とする。これに対し、これまで培ってきたひずみ印加や形状,或いは表面状態とQ値の関係性に関する知見を活用、光ナノメカニカル振動子の共振特性に対する影響を明らかにし、より一層効果的な高Q値化手法を検証する。特に、本研究では、それら機械共振との関係性の他、プラズモニック構造体の吸光特性に対する影響の評価も行う。また、この光ナノメカニカル振動子の共振特性,波長計測特性の評価は、光ヘテロダイン振動計を用いて行うが、光ナノメカニカル振動子のセンサデバイス化を狙い、振動子構造体に振動検出電極を組み込み、振動の電気的検出に関する研究を順次進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度において、光学的観点から波長計測の高分解能化を狙い、サンドイッチ型ホールアレイ構造を有する光ナノメカニカル振動子の研究を行ったが、予測より少ない素子試作で優れた特性が得られたため、その作製に必要な材料や試薬が少なく済んだことが理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
機械的共振高性能化の観点からさらなる高分解能波長計測を狙い、光ナノメカニカル振動子高Q値化の研究を進める予定であり、次年度使用額は翌年度分として請求した研究費と合わせ、この高Q値化の研究を進める上での光ナノメカニカル振動子作製に必要な材料,試薬の購入に用いることを計画している。
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