2015 Fiscal Year Annual Research Report
マルテンサイト変態制御による微細で複雑な3次元連続構造複相鉄鋼材料の創成
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26709054
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
南部 将一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00529654)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 組織制御 / 強度 / 延性 / マルテンサイト / オーステナイト / その場観察 / 結晶方位解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
更なる環境負荷低減や安全性の確保を可能とする超高強度かつ高延性な構造用金属材料の実現のためには、従来のモノリシックな材料設計から脱却し、ヘテロ構造を有する複雑な組織制御に基づいた材料設計への変化が必要である。そこで本研究では、微細かつ複雑な3次元連続構造を有する超高強度マルテンサイト相と高延性オーステナイト相からなる新規複相鉄鋼材料の創成を目指し、特にマルテンサイト変態初期における組織形成過程の検討、オーステナイト相の安定化プロセスや加工硬化挙動の検討を行い、3次元連続構造の形態制御およびその特性向上における指導原理を提案することを目的としている。 H27年度では、マルテンサイト変態における組織形成過程に及ぼす外力の影響について検討するため、共焦点レーザ顕微鏡による変態のその場観察およびSEM/EBSDによる結晶方位解析を行った。ここでは、マルテンサイト変態開始温度よりも高温で引張負荷を与え、応力またはひずみによるマルテンサイト変態中の組織形成過程(バリアント選択性)を検討した。応力の影響によって生じたマルテンサイトについて調査した結果、力学的駆動力の寄与が大きいベイングループに属するバリアントが優先的に生成することが明らかとなった。10%程度塑性変形するまでに生じたマルテンサイトにおけるバリアント選択性についても検討したが、オーステナイト粒のシュミット因子の大小との関係は見られず、応力の影響が支配的であることがわかった。次に残留オーステナイトの安定化プロセスとして、ベイナイト変態以上の温度域で保持することで炭素分配を促進可能なプロセスを試みた。その結果、低温保持では残留オーステナイト中の炭素濃度に勾配が残るが、高温保持では炭素濃度がほぼ均一となり、固溶炭素濃度を制御した残留オーステナイトの作りこみに成功した。さらに引張試験を行った結果、強度延性バランスの向上が達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルテンサイト変態初期において形成される組織形態について外力の影響を明らかにしつつあり、また残留オーステナイトの安定性を制御する手法および指針を提示できており、今年度の目標をおおむね達成しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度では、まず力学特性向上に向けた残留オーステナイトの加工硬化挙動の制御を試みる。これまで得られてきた知見に基づき作製した高強度相と高延性相が複雑に入り組んだ鋼試料に対して、引張試験およびXRDやEBSDによる残留オーステナイト量や固溶炭素濃度、炭素分布などの測定を行い、オーステナイトの加工誘起変態による加工硬化挙動について検討する。ここでは2次元のその場観察だけでなく、3次元組織解析および有限要素法解析と組み合わせた検討も行う。以上より、残留オーステナイトの加工誘起変態に及ぼす鋼の組成や3次元形態の影響を理解し、高性能化に向けた指針を示す。また、これまでの検討してきたマルテンサイト組織形成過程に及ぼす合金元素および外力の影響についても引き続き調査し、マルテンサイト変態の本質についての理解を深める。最後に以上の検討を総括することで、マルテンサイト変態、マルテンサイト/オーステナイト3次元連続構造の形態制御および特性向上における指導原理を構築する。
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Causes of Carryover |
H27年度の途中から電気使用料が課金されたため,H27年度の物品費を抑制し,H28年度の電気使用料として使用するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の実験に必要とされる電気使用料として使用
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