2015 Fiscal Year Annual Research Report
父系重層社会の解明:テングザル・雄グループの生活史
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26711027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 一希 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (90533480)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | テングザル / 重層社会 / 雄グループ / ハレム / コロブス / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
テングザルは、単雄群を社会の基本単位とするが、他の多くの種の単雄群で見られる子殺しが見られず、また単雄群間の敵対的交渉も少ない。申請者はこの傾向を説明するものとして、テングザルが父系的基盤をもつ重層社会を形成し、そのため雄間の血縁度が高くなっているという仮説を立て、研究を進めてきた。野生テングザルの社会構造を解明するためには、糞からDNAを抽出し、効率的に性判別、個体識別、血縁解析を行なうことが最重要課題であった。そこで、横浜市立よこはま動物園にいるテングザルの糞を収集し、DNAマーカーを用いた性判別およびマイクロサテライトの遺伝子型の決定を効率的に行なえる系の確立を第一に目指すことにした。糞サンプル収集の際のタイミングや、保存方法などに工夫を重ね、複数の実験手法を試みた結果、ようやく実験系を確立することに成功した。つまり、得られた系を用いて、飼育個体において正しく性判別、親子判定、血縁判定ができることを確認することができた。飼育個体の糞サンプルを利用した実験系の確立と平行して、マーレシア・サバ州のキナバタンガン下流域において、野生テングザルの糞の収集も開始した。テングザルは、夕刻になると必ず川岸に戻り川沿いの木で眠るため、夕刻にボートから川沿いの木々をセンサスすることで、先ずは調査地内の本種の個体群動態を把握していった。その過程において、前日にテングザルの泊まり場を確認したものについては、翌朝にその泊まり木まで行き、林床から糞を回収していった。現在までに150個以上の糞サンプルを収集、保存している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、全ての実験系を確立することに成功し、それを学術論文にまとめ投稿している。また実験系の確立と平行して、フィールドにおける野生個体の糞サンプルもおおむね順調に収集が進んでいる。以上のことより、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている、マレーシア・サバ州のキナバタンガン下流域における、野生テングザルの糞サンプル収集を継続する。それと平行して、現地マレーシアの共同研究機関において、すでに確立した実験系を用いて収集した糞サンプルからのDNA抽出、分析を順次実施していく予定である。本年度内に、全ての実験を終了させることを目標とする。
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Causes of Carryover |
野生テングザルの社会構造を解明するためには、糞からDNAを抽出し、効率的に性判別、個体識別、血縁解析を行なうことが重要であった。そこで2015年度は、主に国内のテングザル飼育個体から収集した糞サンプルを用いて、その実験系の確立に力を注いだ。そのため、フィールドにおける、野生テングザルの糞サンプル収集のためのマレーシア渡航回数を予定よりも減らすことになった。渡航は減らしたものの、野性個体のサンプルの収集は進んでいる。当初の予定では、野生個体のサンプルは、収集と平行してその実験もする予定だったが、国内における実験系の確立に時間がかかったため、それを開始することが出来なかった。以上の理由により、次年度の使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度にやや遅れた、野生テングザル個体のサンプル収集のため、2016年度は予定よりも渡航回数を増やす。また、2016年度内に全てのサンプル収集が完了する予定であり、2015年度分に実施予定であった実験分も合わせて分析を実施する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Excretion patterns of solute and different-sized particle passage markers in foregut-fermenting proboscis monkey (Nasalis larvatus) do not indicate an adaptation for rumination2015
Author(s)
Matsuda I, Sha JCM, Ortmann S, Schwarm A, Grandl F, Caton J, Jens W, Kreuzer M, Marlena D, Hagen KB, Clauss M
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Journal Title
Physiology and Behavio
Volume: 149
Pages: 45-52
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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