2014 Fiscal Year Annual Research Report
間葉系幹細胞による大動脈瘤治療の臨床応用を目指した研究
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26713043
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
緒方 藍歌 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70718311)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大動脈瘤 / 間葉系幹細胞 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景・目的】大動脈瘤の標準的治療法である人工血管置換術は、瘤破裂予防効果は絶大だが侵襲が大きいため、新たな低侵襲治療法の開発が望まれる。これまでに大動脈瘤に対する間葉系幹細胞療法の有効性を報告してきた。本研究では治療に最適な条件検討や分子メカニズムの解明、前臨床試験を行い、臨床応用を目指す。平成26年度では、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)による大動脈瘤治療効果の分子メカニズムについて検討した。 【実験】24週齢以上、雄のapolipoprotein E遺伝子欠損(apoE-/-)マウスに、背部皮下に埋入した浸透圧ポンプからAngiotensin-II (ATII)を4週間持続注入することによる大動脈瘤モデルマウスを作成した。ATII持注4週間後に1+E06個/0.2ml BM-MSCを尾静脈投与した。対照群には生食を投与した。細胞投与から2週間後に大動脈瘤組織を採取してタンパク抽出し、ウエスタンブロッティング法にてJNK, NF-kB, SYAY1, ERK, Smad2, Aktを検出し定量評価した。 【結果】横隔膜下に大動脈瘤形成が認められ、瘤径は生食群に比べBM-MSC群で有意に縮小した。同部位における瘤発生率は、生食群に比べてBM-MSC群は有意に低下した。JNK、Smad2、ERKは両群間に差がなかったが、NF-κB, STAT1が有意に活性低下し、Aktが有意に活性上昇した。また、NF-κBとAktは瘤径との間に相関関係がみられた。このことから、BM-MSCによる大動脈瘤治療における分子メカニズムには、NF-κB, STAT1, Aktシグナル伝達機構の関与が示唆された。 【今後の予定】現在の瘤径評価方法は、屠殺後のendpointのみの評価となっており大動脈瘤の縮小効果の証明が十分でないと考える。従って、一個体の連続した瘤径の変化を細胞投与前後で追跡することで、細胞投与による大動脈瘤縮小効果を確認する。また、先行研究で細胞療法の持続は2週間であったことから、投与細胞数や投与回数の最適化を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度での計画では、一個体における継時的な大動脈瘤径の変化を追跡し、細胞投与による大動脈瘤縮小効果を確認する予定であったが、マウス大動脈を非侵襲的に観察できる超音波画像診断装置がなかったため遂行することができなかった。また、投与細胞数や投与回数の条件検討においても、超音波画像診断装置による評価が必要であるため検討できなかった。しかしながら、分子メカニズム解明のためのシグナル伝達について調査し、NF-kB, STAT1, Aktシグナル伝達機構の関与を明らかにすることができた。従って、現状ではやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として、平成27年度では継時的評価による大動脈瘤縮小効果の検討および条件検討を行う。これら検討結果を明らかにした後、平成28年度以降では、発症機序が異なる大動脈瘤モデルマウスでの大動脈瘤縮小効果の検討、および前臨床試験としてエラスターゼ誘発ブタ大動脈瘤モデルに対する治療効果の検討を行なう予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度研究計画に申請していた超音波画像診断装置の仕様・性能に関して他メーカー機種と比較検討した結果、購入を中止した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた使用額については、次年度で行うin vivoおよびin vitro検討の際に必要な培養試薬や試験試薬、ディスポ用品等に使用する予定である。
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