2016 Fiscal Year Annual Research Report
間葉系幹細胞による大動脈瘤治療の臨床応用を目指した研究
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26713043
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
緒方 藍歌 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70718311)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大動脈瘤 / 間葉系幹細胞 / 細胞治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈瘤は、大動脈の中膜に存在する組織強度を担う「細胞外マトリックス(ECM)」の合成・分解バランスの喪失により、特に血管壁強度を担うエラスチンが構造破壊され、強度を失った大動脈が瘤状に拡張する。大動脈瘤の標準的な治療は人工血管置換術で、破裂の予防効果は絶大だが、一方で手術侵襲が非常に大きい。瘤径拡大を認める超高齢患者症例に対して、あるいは手術自体が危険なShaggy Aorta症例に対して、新な低侵襲な大動脈瘤治療法の開発が求められる。 動脈硬化を基盤とした慢性炎症を呈する大動脈瘤に対し、我々は「間葉系幹細胞(MSC)」が有する抗炎症作用・免疫抑制作用を利用した大動脈瘤治療法の研究・開発を行ってきた。これまでの研究で、apolipoprotein E遺伝子欠損マウスにAngiotensin-IIを持続注射した大動脈瘤モデルマウスに骨髄由来間葉系幹細胞を静脈投与することによる、一過性の瘤径縮小効果を示してきた。 昨年度に引き続き、サンプル数を増やして超音波装置を用いて同一個体の継時的な瘤径測定を行ってきたところ、投与2週後では縮小したが4週後では徐々に拡大が進行し、8週後では生食群と同程度の瘤経となったことから、同一個体でも一過性の瘤径が縮小していたことが明らかとなった。 MSCによる治癒メカニズムの解明として、MSCが産生する因子;エクソソームに着目した。MSC由来エクソソーム静脈内投与においても1週間後で瘤経縮小効果がみられた。投与したMSCが大動脈瘤病変部位にほとんど集積していないのにもかかわらず治療効果が得られた理由の一つとして、エクソソームによるものである可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の検討課題である発症機序が異なる塩化カルシウムによる大動脈瘤モデルでは、モデル作成には成功したが、外膜剥離の手術手技が難しく大動脈経拡大を伴わない例も多く、安定したモデル作りに時間を要した。また、投与細胞数や投与回数の検討には従来のapolipoprotein E遺伝子欠損マウスを用いるが、繁殖数に対して本実験に必要な供給数に満たなかったため、予期せず遂行困難となった。したがって、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
塩化カルシウムによるモデル作成手技を安定させたのちに細胞治療を行い検討を進める。apolipoprotein E遺伝子欠損マウスは、実験に必要となる匹数をできる限り確保し投与細胞の最適化を図る。また、これらと並行して大動物による検討を進めるため、ブタもしくはイヌを用い、骨髄由来MSCの樹立とcharacterizationを行うとともに、治療効果の確認を行う。
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