2014 Fiscal Year Research-status Report
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26730122
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村脇 有吾 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (70616606)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 系統推定 / 方言 / 語彙 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、統計的手法により日本語諸方言の系統を推定することを目的としている。系統推定に必要なデータはすぐに利用可能な形で整備されているわけではない。そこで、本年度は、当初の計画通り、既存の紙ベースの方言調査報告を土台に、機械可読なデータベースの設計を開始した。京都、東京および九州諸方言を主な対象としたプロトタイプ作成に取り組み、実現可能性を検討した。九州諸方言を選んだ理由は、(1) 非統計的な手法により系統樹を作成した先行研究があること、および (2) 方言群は大きく4種類の類型に分類できるが、九州ではそのうち3種類が確認できることである。語の表現方法には音声的表記と音韻的表記があり、後者は個別方言の体系に依存する。系統推定のために方言同士を比較するには、語も比較可能な表現でなければならない。現在までに、再録する語彙とその電子的な表現方法を決定し、主に九州諸方言について実際に採録した。これと並行して、統計的系統推定の既存研究を改めて調査した。その結果、語彙の有無に基づく先行研究について、その問題点を詳細に分析する必要があることを認識した。そこで、系統樹 (つまり言語分岐の繰り返し) により方言群の語彙が形成されるのではなく、接触に基づく伝播によって語彙が形成されるという空間構造モデルを提案し、シミュレーション実験によりその振る舞いを分析した。空間構造モデルは、系統樹、すなわち木とはまったく異なる解釈である。こうした解釈に当初想定していた以上に研究の余地があることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は統計的推定モデルの開発開始までを計画していたが、着手にまでは至らなかった。ただし、大きな遅れではなく、今後充分に挽回可能な範囲にとどまっている。遅れの理由は2つあり、一つはデータベース作成の際、当初の予想以上に例外が多いことを発見し、その対応を検討したことである。もう一つは、既存研究の批判的再検討という当初はあまり重要視していなかったサブ課題に大きな研究の余地を見出したことである。
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Strategy for Future Research Activity |
統計的推定モデルの開発に着手する。また、データベース採録の対象を九州以外の本土諸方言に拡大する。九州諸方言を対象とした初年度の研究の結果、東北諸方言等、標準語と体系上の違いの大きな方言を初期段階で扱うことが、データベースを適切に設計するうえで重要であることに気付いた。そこで、より広範囲から代表的なサンプルを集めるという方針で採録を進める。これと並行して、空間構造モデルによる既存研究の批判的再検討も発展させる。
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Causes of Carryover |
雑誌掲載費としての使用を見込んでいたが、採否決定が次年度にずれ込んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り雑誌掲載費としての利用を計画している。
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Research Products
(5 results)