2014 Fiscal Year Research-status Report
生殖補助医療規制の構築における「子どもを持ちたいという欲望」の評価
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26760020
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小門 穂 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (20706650)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フランス生命倫理法 / 生殖補助医療 / 同性婚 / 子どもを持ちたいという欲望 / 医学的不妊 / 社会的不妊 / 同性カップルと生殖補助医療 / フランス国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フランスにおける生殖補助医療を利用できる人の範囲がどのように構築されているか、そこに「子どもを持ちたいという欲望」がどのように関わっているかを明らかにすることである。生殖補助医療を規制する生命倫理法(1994年、2004年、2011年)および2013年の同性婚法をめぐる議会での議論を主な研究対象とする。これらの議論において「子どもを持ちたいという欲望」がどのように扱われているのか、フランス社会における「医療技術を用いて子どもを作ること」が許される人と許されない人の線引きがどのようになされ、社会の変化によりどのようにゆらいでいるのかを明らかにすることをめざす。 平成26年度はフランス・デンマークにおける調査および議会資料を中心とする文献調査、生命倫理学会での口頭報告をおこなった。 フランス調査では、法学者、医学者との研究交流および文献収集を行った。デンマーク調査では、生殖補助医療の国境を超える利用と家族関係の研究グループであるKINTRAプロジェクトにてセミナーを実施した。 文献調査では、生命倫理法・同性婚法の法案・報告書・審議記録などから「子どもを持ちたいという欲望」について言及されている箇所を抽出し分析した。1988の生命倫理法草案において男女のカップルの欲望については言及されており、生命倫理法2011年改正時に同性カップルを含めた「万人の子どもを持ちたいという欲望」について議論され、法文の修正を導いた。生殖補助医療の規制は、男女のカップルの子どもへの欲望が満たされない場合に医療技術を用いて応えるという構造であったが、独身者や同性カップルといった幅広い人々の社会的不妊への対応が求められる現状への対応として、子への欲望と、医学的不妊に対する治療である生殖補助医療を切り離したといえることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査、現地調査ともにほぼ予定通りに進めることができたと考えている。フランスでは、生命倫理法に関する議会審議が行われる際には、法案提出に先立ち国家倫理諮問委員会や議会科学技術評価局、国務院、上院・下院の特別委員会などが聴聞を行い、報告書を作成する。これらの報告書についてはオンライン、現地での文献収集により網羅することができた。また、同性婚についても、オンラインおよび現地調査により関連資料を入手できている。 これらの成果として、平成26年度に予定していた中間報告として、生命倫理学会での報告を行うことができた。こういった状況から、順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる平成27年度は、26年度末に実施した現地調査の取りまとめおよび文献調査を続行し、成果報告を行う予定である。26年の成果により「子どもを持ちたいという欲望」の扱われ方について示唆が得られたので、それをもとに、フランス社会における「医療技術を用いて子どもを作ること」が許される人と許されない人の線引きが、社会の変化によりどのようにゆらいでいるのかについての考察を深める。
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Causes of Carryover |
所属先におけるエフォート管理の関係で、海外調査を短期間にせざるをえなかったため、旅費分が当初予定していた額よりも低くなっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には、日本国内の研究者との意見交換を予定しているよりも頻繁に行う予定である。
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