2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26770020
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾園 絢一 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (90613662)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 重複現在語幹 / ヴェーダ / パーニニ文法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツ学術交流会(DAAD)主催のFruhjahrstreffen mit "Butterbrot und Bier"において招待講演を行い、バラモン教における言葉の観念、これまでの研究成果を人文科学、自然科学の研究者に向けて紹介した。 第16回世界サンスクリット学会(16th World Sanskrit Conference)において、動詞adとghas「食べる」の交代(suppltion「補充法」)について発表を行った。この二つの動詞のヴェーダの用例とパーニニ文法学の議論とを比較し、パーニニが教える動詞形成法がどの時代の言語に基づいているかを解明するための一視点を提供した。発表の内容をまとめ、Proceedingに投稿した。 第5回ヴェーダ文献研究会にてヴェーダ語の動詞raa「授ける」の重複現在語幹ra-r-とアオリストraa-s- の用例を精査し、重複現在(reduplicated present)語幹とアオリストの機能的差異に関する問題を検討した。同時にraa「授ける」とdaa「与える」の活用レベルにおける補完関係(suppletion)の有無も検証した。その結果、raaはインド・イランに由来する動詞であり、マントラにおいて好んで用いられる、古語であったことを確認し、非常に緩やかながら、daa「与える」との補完関係がある可能性、さらなる調査の必要性を指摘した。 第6回ヴェーダ文献研究会では、意欲語幹(desiderative)の中、異化縮約が起こり、重複音節が失われたものを中心に発表した。特にdaa「与える」とdhaa「置き定める」の意欲語幹ditsa-, dhitsa-、重複現在語幹dat-, dhat-に見られる音韻上の問題についてこれまでの研究を整理しつつ、検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はパーニニ文法の動詞組織に関する問題に取り組んでいたため少し遅れていたが、今年度から重複現在語幹のヴェーダの用例調査に本格的に取りかかり、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度調査したraa「授ける」と関連して、daa「与える」、dhaa「置き定める」の重複現在語幹の本格的調査を開始する。この二つの動詞の重複現在語幹はインド・ヨーロッパ祖語に遡り、ヴェーダ、古典期を問わず、頻繁に用いられる。つまり最も代表的な重複現在語幹であり、本研究の中核部分に位置づけられる。まずこれらの重複現在語幹の膨大な用例を整理し、動詞の活用表(paradigm)を再構成する。その後、パーニニ文法学に見られる重複現在語幹一般に関する議論と比較する。これまでの調査に基づいてパーニニが教える言語を古インドアーリヤ語の歴史的展開の中に位置づけることを試みる。
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