2015 Fiscal Year Research-status Report
日本伝七絃琴の研究 -日本・中国の琴譜の比較と古譜の演奏解釈を通して-
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26770041
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
鳥谷部 輝彦 東京藝術大学, その他の研究科, 研究員 (80726216)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 七絃琴 / 江戸時代 / 明清時期 / 逸書 / 東皐琴譜 / 古楽譜の演奏 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、資料調査に関しては、明清代中国で出版されてから江戸期日本に輸入された七絃琴文献、及び江戸期日本で編集された七絃琴文献に対する調査を日本国内で行った。調査した公共機関は次の八箇所。東北大学附属図書館(狩野文庫)、都立図書館(特別文庫)、国会図書館、国文学研究資料館(田安徳川家寄託資料)、東京藝術大学小泉文夫記念資料室、東京音楽大学附属図書館、関西大学総合図書館、府立中之島図書館。調査方法は、資料の実物の閲覧、資料の写真撮影、及び資料の複写である。 2、古楽譜の解釈に関しては、日本編集の七絃琴の楽譜『東皐琴譜』から三曲を選び、中国の七絃琴演奏家に楽譜解釈と演奏を依頼しており、現在も継続中である。解釈の典拠とする写本は、数多くある『東皐琴譜』の諸写本のうち、転写年代と内容上で成立期の原本になるべく近い転写本を選んでいる。 3、中国において、古老の七絃琴演奏家にインタビューを行った。 4、明清代中国から江戸期日本に輸入された七絃琴文献の内、現在の中国が逸失した文献についての中国語論文を、先行研究に基づきながら書いた。当論文で扱った文献は三部であり、国会図書館蔵《清湖琴譜》(中国では逸失した孤本)、内閣文庫蔵《琴經》(陽春堂琴經)の印本(中国では転写本が所蔵され、印本は逸失した)、国会図書館蔵《琴經》(太古正音琴經)の印本(中国所蔵の印本よりも落丁の少ない善本)である。当論文は平成27年度に《中国音楽学》(中国北京市)へ投稿し、平成28年度中に掲載するよう決定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本国内における資料調査(古典籍の調査)は概ね計画通り進んでいる。国外誌(中国)ではあるが、査読付き論文一編の掲載が決まった。計画上の考慮不足により、「古楽譜の解釈」が計画より遅れている。計画には無かったが、中国における資料調査の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、江戸時代の日本の七絃琴の伝承を中国の琴楽史の中に位置付けるために、次の二つの方法、(1)古典籍の調査と分析、及び(2)古楽譜の解釈、を執った。このうちの(1)を二つの視点に分割するべきだと平成27年度中に判断した。即ち(1-1)明清朝の中国から江戸時代の日本に輸入された七絃琴文献の調査、及び(1-2)日本で編集された『東皐琴譜』等の七絃琴文献の調査、の二つに分け、両者を照合させる必要がある。(1-1)についてはこの科研費研究の期間中には端緒に着いたばかりであり、今後も継続する必要がある。(1-2)についての進捗度は半分くらいには達したという手応えがあるが、これも残り一年の科研費研究の期間には終わらないだろうと判断する。 (2)古楽譜の解釈については、平成27年の状況が計画より遅れている。また、計画では「古楽譜」の範囲を『東皐琴譜』の61曲と定めたが、平成27年中の計画見直しにより、その他の明代琴曲で東皐心越が伝承した数曲も範囲に加えるべきであると判断した。平成28年度の研究では注力して(2)を進める。
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Causes of Carryover |
平成27年12月に中国の学術雑誌《中国音楽学》に論文を投稿した。査読期間が最長6箇月であり査読の結果通知がいつ到着するか不明であったことと、査読を通過した場合の論文の掲載料が不明であるため、経費を残しておいた。結果的には平成27年度中には掲載はしないこととなったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
《中国音楽学》への論文は、査読を通過し掲載決定となったため、次年度使用額を用いて平成28年度中に掲載する。但し、現時点では掲載料がまだ不明であるため、必要であれば平成28年度の経費の一部を掲載料の一部に充てる可能性がある。
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Research Products
(1 results)