2015 Fiscal Year Research-status Report
シュルレアリスムの国際化における創造的変容をめぐる比較研究
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26770052
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石井 祐子 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60566206)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イギリスのシュルレアリスム / 日本のシュルレアリスム / ハーバート・リード / ローランド・ペンローズ / 瀧口修造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シュルレアリスムの国際化における創造的変容について、主に日本とイギリスにおける受容の問題をめぐって比較考察することを目的としている。今年度は、平成27年度の研究実施計画に従い、昨年度夏にイギリスで行った調査研究で収集した史資料の分析に注力した。また、日本のシュルレアリスムに関しても、瀧口修造の活動を中心として、昨年度に引き続き国内の美術館やアーカイヴ等で調査を行い資料収集に従事した。 以上を基に、今年度はとくにシュルレアリスムの受容と展開において画廊が果たした役割、地政学的問題と表象との関わり、アカデミズムとの関係、翻訳の問題等に着目して比較考察を行った。また、従来議論されてきた自国の「伝統」との接続についても個別具体的に再考した。これらの問題が、1930年代半ば以降に顕著となったシュルレアリスムの「国際化」という動きのなかで如何に有機的に結びついてゆくのかを明らかにすることを試みた。年度後半には「受容」という観点を超えた議論を見据え、第二次世界大戦後のシュルレアリスムの展開について調査を行った。 イギリスにおけるシュルレアリスムに関する研究成果の一部は、「その道は、長いというより広い―一九三〇年代のコーク・ストリートにみるイギリスにおけるシュルレアリスム受容の一側面―」(『藝術研究』第28号, 2015年7月, pp. 1-15)として発表した。また、瀧口修造と日本のシュルレアリスムに関する研究成果の一部は、イギリスの出版社(Bloomsbury)より刊行される共著に寄稿し、2017年出版予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の海外渡航調査によって得た史資料に加え、本年度は国内のアーカイヴでの史資料収集、研究会での意見交換等も充実したものとなり、分析・考察に注力することができた。戦後のシュルレアリスムに関する検討には課題が残るが、これは当初の計画の範囲内であり、同問題についてもイギリスのシュルレアリスム研究者と定期的な意見交換を行い順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き研究計画に従い、アーカイヴ調査や資料・作品分析を行う。また、「受容」という観点を超えた議論の試みとして、とくに戦後のシュルレアリスムの展開を見据えた研究を行う。平成28年度は最終年度となるため、年度後半はこれまでの研究をまとめた成果報告とともに、新たな課題を整理する作業を行う。
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Causes of Carryover |
年度末の国内調査の予定が翌年度初頭にずれ込んだため、予算の執行(旅費)に若干の変更があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度残額については、平成28年5月の国内調査として使用する予定である。
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