2014 Fiscal Year Research-status Report
法隆寺献納宝物と正倉院宝物における上代染織作品の研究
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26770056
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
三田 覚之 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 研究員 (00710493)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 法隆寺献納宝物 / 正倉院宝物 / 上代裂 / 文化財保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、法隆寺献納宝物として東京国立博物館が所蔵する法隆寺伝来の上代裂(じょうだいぎれ 古代の織物)を中心に、献納宝物及び正倉院宝物の歴史的・文化的背景を造形の側から明らかにするとともに、現在バラバラの状態で保管されている上代裂について、本来作品として仕立てられていた当時の組み合わせを作品調査に基づいて明らかにする。また未解明な部分が多い法隆寺裂の全体像(数量・技法・文様)についても作品調査と写真撮影によってテータベース化を図り、写真つき目録の形にする予定である。以下、当該年度の実績を記す。 1.韓国での調査:10月20日~30日:国立中央博物館、松林寺(石製舎利外容器の調査)、大国立邱博物館(松林寺五層石塔出土品の調査)、国立公州博物館(武寧王陵出土品の調査)、国立扶余文化財研究所(王興寺址出土品調査)、国立扶余博物館(陵山里古墳群の出土品調査)、国立全州博物館(王宮里五層石塔出土品の調査)、益山弥勒寺址(弥勒寺西石塔出土品の調査)。 2.国内での調査:法隆寺献納宝物の染織品調査(通年)、東京国立博物館の唐櫃調査(12月~27年1月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究はおおむね順調に進展している。韓国での調査は主に金工作品に注目して行った。献納宝物のうちには年代や制作地が不明のものが多くのこされている。そうした作品の造形的な特長を近年韓国で発掘された考古遺物と比較研究した。その結果、百済の美術、なかでも6世紀末から7世紀はじめの作品と多くの類似性が見出せた。これはちょうど聖徳太子が活躍していた時期にあたり、太子周辺を主導とした古代の日韓交流について、実作品を通じて跡付けることができた。 献納宝物の染織作品に対する調査で得た知見を、現在行われている法隆寺裂の保存修理に反映させることができた。 また、韓国での調査成果については口頭発表を行った。この内容については論文にまとめ『MUSEUM』に投稿する予定である。また、先述のように、現在館内においては継続して法隆寺裂の保存修理が行われている。作品の調査に基づいて、現在はばらばらの状態である作品本来の形を推定することが可能となったため、これを反映した修理を行った。なお、現在本研究の一環として上代裂の修理報告書の定期的な発表を目指しており、その第一回目の論文中に調査した唐櫃の概要と上代裂との関係について執筆した(『MUSEUM』655号掲載予定)。
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Strategy for Future Research Activity |
韓国の考古作品については、研究成果を発表するのに必要な調査と写真撮影をおよそ完了することができた。また論文の執筆も順調に進めることができた。だが一方で本研究において目標としている国内調査(正倉院事務所をはじめとした美術館・博物館・個人)についてはあまり進展していない。この反省を踏まえ、次年度では国内での調査研究を充実したものとしたい。
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Causes of Carryover |
韓国調査については当初本科研の予算を充てる予定だったが、国立中央博物館との学術交流において実施したため。また予定していた国内調査(正倉院事務所をはじめとした美術館・博物館・個人)を日程の都合上行なうことができなかったため残高が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内調査および国外調査(韓国・中国)において活用したい。
調査予定先:法門寺博物館(中国 陝西省 宝鶏市 扶風県 法門鎮)、韓国国立中央博物館
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