2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26770086
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
河野 龍也 実践女子大学, 文学部, 准教授 (20511827)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国文学 / 近代文学 / 台湾 / 中国 / 植民地 / 戦争詩 / 草稿研究 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年は佐藤春夫没後50周年の節目にあたり、和歌山県新宮市立佐藤春夫記念館で企画された展覧会「佐藤春夫と〈憧憬の地〉中国・台湾」(会期:2014年10月30日~2015年2月15日)に台湾・福建旅行関係の古写真資料を提供したほか、キャプション原稿作成などで協力した。その準備のため、8月と10月に新宮に出張。また、同展示に関連した国際シンポジウムの開催にも協力し、2015年1月31日、中国の研究者・日本の台湾原住民族研究者を招いて討論を行った。来場者は約120名。その際、「佐藤春夫が語らなかった台湾・福建」と題して本研究の成果を報告した。今回の企画により、春夫文学を広くアジア近代の歴史的視座から捉えなおす一つの提案ができたと考えている。 没後50周年に関連しては、他に『佐藤春夫読本』を企画し、編集を担当した。そのうち評伝と春夫作品の都市論的研究について執筆した。春夫関係者のご協力により、『読本』に合わせて数多くの新資料を調査することができた。佐藤春夫の少年期の日記をはじめ、その他肉筆原稿資料などの分析を進めている。父から春夫に宛てられた書簡の整理・翻刻も進んでおり、年譜情報の増補を計画している。これも公開の準備中である。 今年度の本研究にかかわる学会発表は上記の1回。また研究論文は2本発表。論文「紀行から批評へ-佐藤春夫が台湾を描くとき-」では、春夫が単純な台湾紀行文を小説作品「旅びと」へと書き直す際に、自然開発への違和感と、〈内地人〉どうしの「旅愁」を通じた共感を描こうとした点を論じた。また「“疎開者”佐藤春夫の“敗戦”-詩稿が語るもの」では、春夫の創作ノート(新資料)を素材に、戦争詩人であった春夫が「疎開者」という自己規定を通じて戦後文壇に復帰するプロセスを、具体的な表現分析から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、進捗状況を確実にするため、3つのテーマを柱にして取り組んでいる。 A:春夫宛て諸家書簡類の翻刻作業と解説の作成については、新資料の発見により公開までより準備期間が必要になった。 B:草稿類の整理と分析については、詩稿について分析を進め、予定通りの進行である。 C:春夫の台湾・中国紀行に関する詳註の作成については、佐藤春夫記念館における展示の準備を通じて成果を広く公開することができ、想定以上の進捗をみた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在企画中の『佐藤春夫読本』につき、2015年10月までに刊行するため資料の収集と執筆、権利関係の処理につとめる。春夫関係者(遺族)と佐藤春夫記念館との連携により、2014年中には新たに数多くの資料が発見された。今後、書簡・原稿・ノート・写真等資料の種類別に遺品を整理し、撮影と翻刻作業を進めていく予定である。2015年度中に発見資料の全体像を把握し、公開の手続きについて協議を進めていく計画である。
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Research Products
(3 results)