2014 Fiscal Year Research-status Report
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26770088
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
和田 琢磨 東洋大学, 文学部, 准教授 (40366993)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 太平記 / 神田本 / 室町時代 / 異本生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、単著1冊、論文1本、口頭発表1回という研究成果を挙げたほか、龍門文庫蔵豪精本太平記の調査も行った。 具体的には、これまでの成果21篇の論考をまとめた『『太平記』生成と表現世界』(新典社)を公刊し、『太平記』の生成・表現世界・享受の問題についての問題を論じた。特に表現世界の問題では古態本の表現性について考え、この科研のテーマの基礎となるものである。 また、論文「神田本『太平記』本文考序説―巻二を中心に―」では、古態本の代表として目されてきた神田本の研究史を整理した上で、切り継ぎや異本本文の書き込みについて検討した。その結果、神田本は古態本としてだけでなく、むしろ室町時代、15世紀の『太平記』本文の本文改訂を考える上で重要な要素を持っていることを明らかにした。 これを踏まえ、口頭発表「神田本『太平記』の本文をめぐる一考察」では、神田本巻32の混合本文や書き込みを分析し、15世紀の『太平記』本文の改訂のあり様について考えた。この発表のポイントは、巻32に書き込まれた永和本系本文についてのみ注目されてきた中にあって、神田本の本文そのものを総合的に検討した点にある。特に、神田本本文は、何か校合結果を書き込んだ本を元にしているという指摘は、神田本研究のみならず、室町時代の『太平記』の異本生成の具体的なあり方を示したもので、この科研のテーマと完全に一致するものである。 以上のように、今年度はほぼ予定通りに研究を進めることができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの成果をまとめた単著『『太平記』生成と表現世界』を公刊できたことにより、室町時代の『太平記』の表現世界を考える上での基礎ができた。また、困難を極める神田本の研究史を整理・検討した論考を発表し、それを踏まえた口頭発表をすることができた。また、阪本龍門文庫蔵豪精本太平記の調査も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、神田本だけではなく、西源院本等の伝本にも注意を払いながら、太平記の表現世界について考えていきたい。特に、本文の検討を注意深く行いながら考えていく予定である。 諸本調査についても、豪精本だけではなく、室町時代の伝本を広く見渡し、基礎的な問題を整理していきたい。そのために、紙焼き写真を撮る予定である。
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