2014 Fiscal Year Research-status Report
米国モダニズム文学および視覚芸術における宗教的なるものへの探求
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26770108
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小林 久美子 法政大学, 文学部, 講師 (30634117)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / フォークナー / フィッツジェラルド / 宗教と文学 / モダニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大量消費や科学的労働管理等の物質主義的・合理主義的文化が席巻し始めていた20世紀初頭の米国にあって、民衆にとっての新たな救済となった種々の非-制度的宗教の動きを当時の芸術家たちはどのように表現したかということを追求するものである。初年度にあたる本年はモダニズム文学における宗教性についての理論構築を行うべく、基盤的文献の調査・収集につとめた。その成果の一部を、2014年6月慶應義塾大学にて開催されたアメリカ文学会東京支部シンポジウム「アメリカ文学と宗教」において発表する機会を得た。本論では、ウィリアム・フォークナーの代表作『八月の光』における超越性の問題を「慈善行為」という観点から考察した。本作に関する宗教的考察はこれまでもあまた見られたが、それらはおもに聖書との関連およびアメリカ南部特有の宗教文化と結びつけるものであったが、本論ではキリスト教という制度的枠組みではなく、「超越」という観念を主軸に据えることによって、本作がいかに制度的宗教では体験し得ないような超越的感覚を描いたかを考察した。また、2014年10月に開催された法政英文学会の講演において、スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』に関する考察を発表した。これは作品内のゴミの表象に着目することによって、本作独自の宗教性の在処を詳らかにするものである。フォークナーと同様、フィッツジェラルドもまた、形骸化した制度的宗教では体験し得ないような啓示的瞬間を世俗の場において顕現させたということを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は関連分野の文献調査を行い、モダニズム文学および芸術における宗教性と物質性の結節点を探るための概念構築を試みることであった。本目標は、2回の口頭発表を通してフォークナーとフィッツジェラルドそれぞれの代表作における宗教性の表象について考察することでおおむね達成できたように思う。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き米国モダニズム芸術における宗教性の表象についての研究を行う。二年度に当たる来年度では上半期において口頭発表が一回、その発表を基盤にした論文一本が予定されている。下半期では口頭発表ではなく、活字にすることに専心して、3月末までにまとまった長さのフォークナー論を仕上げる所存である。
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Causes of Carryover |
本研究は海外文学が焦点となるため、洋書を注文することが多い。海外のオンライン書店から注文すると、実際には初年度内に注文したとしても、手元に届くのは年度を過ぎてしまうことが十冊以上にのぼったため、次年度使用額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述の通り、海外のオンライン書店から文献を集中的に取り寄せたのは初年度内であって、それが請求されるのが本年度の4月であるというだけなので、次年度使用額はすでに大半が消化されている。
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Research Products
(3 results)