2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26770128
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 愛 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 研究員 (50638294)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国古典文学 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、宋代の代表的文人蘇軾の文集の編纂・伝承の過程を具体的かつ系統的に考察することを目的とし、蘇軾の生前から現代に至るまでその文学が如何にして文集として編纂され受容されたかを明らかにするものである。蘇軾の文学は時代・地域を越えて読み継がれ、かかる伝承の過程を究明する優れた先行研究は存在するが、後続の宗族・弟子・地縁などから具体的に究明したものは無く、また、その後の伝播の具体的・系統的状況にもあまり注意が払われていなかった。本研究により、蘇軾の文学の系譜と伝播状況が解明されれば、蘇軾研究だけでなく、出版史研究・宗族史研究・比較文学研究といった各研究分野の発展にとっても大いに意義が有ると言えよう。 平成26年度に実施する計画であったのは、「南宋・金及び元の蘇軾文集の編纂と受容」についての研究であった。本研究の基盤となる元祐党禁後の蘇軾文集の形成及び受容の過程を明らかにする作業である。蘇軾の亡くなった北宋末から南宋までに行われた蘇軾の文集編纂の様相については、系統立てて「南宋蘇集編纂考」と題する論文として発表した。同時に、蘇軾の詩文が日本文学に与えた影響についても調べつつ、それを国語科教材とする道を模索した。また、元祐党禁後の禁書や詩禍についても調査を行い、南宋朝に起こった「江湖詩禍」について寄稿した。南宋時代の版本が現存する『和陶詩集』全四巻については、5月の第1回日本宋代文学学会において「蘇軾『和陶詩集』流伝考」として報告したため、更に精査して平成27年度には論文にまとめるつもりである。 ただ、金及び元における蘇集編纂についても調査及び研究を行ったものの、資料の更なる収集が必要であり、報告には至らなかったので平成27年度に繰り越して行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度に科学研究費助成事業(科学研究費補助金)の研究成果公開促進費学術図書の助成を受け、平成27年2月28日に「蘇軾文学の継承と蘇氏一族―和陶詩を中心に」(課題番号:265048)を上梓した。そちらの修正作業等と同時に本研究を進めた結果、平成26年度に行う「南宋における蘇軾文集の編纂と受容」についてはほぼ終了したが、南宋時代の調査の一部が十分にできず、また、「金及び元における蘇軾文集の編纂と受容」を十分に調査・報告する時間を確保できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
「金及び元における蘇集編纂」については、調査を継続するが、学会報告を省略し、平成27年9月までに論文において報告する。 同時に平成27年度に一ヶ年を充当して計画していた「明・清の蘇軾文集の編纂と受容明」についての研究を半年遅らせ、平成28年7月までに論文として提出する。 また、平成26年度の調査から、南宋本の『和陶詩集』全四巻について、出版と文学的内容の両方からのアプローチが更に必要となったため、これも同時に進める。
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Causes of Carryover |
平成26年度に科学研究費助成事業(科学研究費補助金)の研究成果公開促進費学術図書の助成を受け、平成27年2月28日に『蘇軾文学の継承と蘇氏一族―和陶詩を中心に』(課題番号:265048)を上梓した。そちらの修正作業等と同時に本研究を進めた結果、平成26年度に行う調査・研究を十分にできる時間を確保できなかった。また、例えば、日本内閣文庫に行って閲覧する予定であった南宋刊『類編増広潁浜先生大全文集』は、王水照編『宋刊孤本三蘇温公山谷集六種』(国家図書館出版社)に影印されて収録されていると王先生本人から聞いたので、内閣文庫に行かずにそれを購入することにした。その他、手続き上の問題で購入できなかった図書や物品が多数あったため、それについては別の購入ルートを模索しているところであり、次年度に使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として図書の『王状元集百家注分類東坡先生詩』、『宋傅干注坡詞』、『東坡先生往還尺牘』、『中華再造善本総目提要』、『宋刊孤本三蘇温公山谷集六種』、『四庫提要南宋五十家研究』等を購入予定。また、一眼レフカメラ・スキャニング機材一式購入予定。旅費として学会参加及び調査のために、海外では上海復旦大学・杭州浙江大学、韓国高麗大学に行くことを予定する。国内も福岡・東京・大阪など各県で開催される学会に参加し、調査する予定である。人件費として、国際学会参加の際は事前の中国語翻訳及びネイティブチェックが必要であるのでその行った者に支払う。また、海外での調査の際に随行する通訳やサポーターに支払う。以上の調査・研究にしたがって発生する消耗品なども購入する。
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