2015 Fiscal Year Research-status Report
倭訓栞を中心とした近世国語辞書の記述史に関する研究
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26770159
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
平井 吾門 弘前大学, 教育学部, 講師 (80722214)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国語辞書史 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世中期に編纂された『倭訓栞』は、近代国語辞書の成立に大きな影響を与えたものとして考えられてきたが、調査資料の充実に伴いさらに多くの知見が得られつつある研究対象である。本研究は、『倭訓栞』の前後に成立した諸文献との内容比較を図るとともに、その為の基礎研究及びデータベースの拡充を進めるものであり、国語辞書史における語釈記述の在り様が江戸中期に確立していく様子を明らめることを目的とする。 当該年度27年度は、昨年度作成した倭訓栞の全文テキストデータを活用することで、収録語彙の品詞分類・語種分類を進めた。それらを通じて、収録語彙を意図的に拡大していく様子を浮き彫りにし、『倭訓栞』の中に「日本語辞書」としての自覚が見られるようになった点を指摘した。本調査では、原資料の調査だけでは限界のあった記述を万遍なく拾い出すことが出来たため、テキストデータ及びデータベース活用の意義も検証が進んでいる。また、全国に点在する『倭訓栞』諸本の調査を通じて、重要写本である東京都立図書館蔵本の意義を再確認するとともに、弘前市立図書館蔵本にも倭訓栞の成立に関わる重要な情報が含まれていることを確認した。特に、東京都立図書館蔵本は、従来検討されてきた成立時期に検討の余地を見出し、辞書記述史の研究において大きな鍵を握っている資料であることを示した。 研究成果については、研究発表を一つ行うとともに学会誌に2編、大学紀要に2編の研究論文を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の想定通り、品詞や語種といった基礎的語彙分類を用いることで、『倭訓栞』の記述が起稿当初から刊行に至るまでの間で大きく変化していく様子を捉えることには概ね成功した。また、全国に点在する『倭訓栞』諸本の調査を通じて、国語辞書の記述史に関わる重要な一群を概ね絞ることが出来たため、対象を絞って研究を進めることが可能となった。ただし、サンプル調査に基づく見解が中心であるため、精度を上げるためにはより網羅的なデータの拡充を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、国文学研究資料館を中心に多くの機関においてデジタル資料の公開が進み、『倭訓栞』周辺資料との比較をさらに進める環境が当初の予想を超えて調ってきた。そのため、本研究において個別に資料をデータ化していく作業を一先ず措き、今後はそれらを活用することで記述の比較を進めていくこととなる。その際、これまでの研究で有効性が明らかとなった基礎データについては、研究の精度をあげるためにも随時拡充を進めていくものである。また、都立図書館蔵本や弘前市立図書館本『倭訓栞』の資料的価値が予想以上に高いことが判明したため、昨年度までの調査で判明している「書き込みのある版本」の類との比較検証が重要であることが明らかとなった。そのため、写本および書き込み本の調査を重点的に進めることで、『倭訓栞』成立過程の細部を究明していく。 研究成果は、学会発表および学術論文を通して公開を行う予定である。
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Causes of Carryover |
予算は概ね計画通りに使用したが、細かな支出の積み重ねにより、専門書や古書の購入には足りない若干の金額が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
複写費の一部として充てることとしたい。
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Research Products
(5 results)